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◆履行期〔債権法 総則〕🔗🔉

◆履行期〔債権法 総則〕 りこうき →図 【履行期と期限】  弁済期あるいは単に期限ともいう。債務の履行をなすべき時期である。  履行期は当事者の契約によって決められるのが普通であるが、当事者が特に取決めをしなくても、法事に使う菓子を注文する場合のように給付の性質から決まることもあれば(この場合法事の日が履行期になる)、商人のツケが月末支払いを通例としている場合のように、取引の慣行などから決まることもある。  また民法は右のようにして履行期が決まらない場合の補充規定をおいている(五九一条・五九七条・六六二条など)。それによっても決まらない場合は債権発生と同時に履行期が到来するものと考えられている。  履行期は法律上いろいろな効果と結びつけられている。その重要なものを挙げると次のとおりである。<1>債務者が履行をせずに履行期を徒過すると履行遅滞の責任を負う(四一二条、なお履行期が不確定期限である場合に、注意すべきである。同条二項)。定期行為については履行期の経過によって直ちに解除権が発生する(五四二条)。<2>債権の消滅時効は履行期から進行する(一六六条)。<3>自分の債権が履行期にあれば、相手方が自分に対して持っている債権と相殺できる(五〇五条)。<4>双務契約で双方の債務が履行期にあると同時履行の抗弁権が成立する(五三三条)。

→◆債務不履行〔債権法 総則〕🔗🔉

◆債務不履行〔債権法 総則〕 さいむふりこう →図 【債務不履行】  広い意味は、債務者が債務の本旨に従った履行をしないこと。債務の本旨に従った履行かどうかは、当事者が果たそうとした目的、取引の慣行、信義則などを取捨して判断される。例えば、米屋が約束の時日に米を届けないとか、鮨屋に届けた米が外米であったというような場合は、債務の本旨に従って履行をしたとはいえないであろう。  債務不履行には、履行遅滞、履行不能、不完全履行の三つの型がある(四一五条)。  履行遅滞(別項参照)とは、先の例の米を届けなかった場合のように履行が可能なのに債務者が履行期までに履行しない場合をいう。履行不能(別項参照)とは、例えば、売買目的物が焼失した場合のように履行したくとも履行ができなくなった場合をいう。また、不完全履行(別項参照)とは、先の例の届けた米の品質が悪いとか、あるいは量目不足である場合のように一応履行はしたのだが、その履行が完全でない場合をいう。  債務不履行のときには(履行不能でなければ)債権者は裁判所に訴えて強制履行をしてもらうことができる(四一四条)。  更に、狭い意味で債務不履行というときには、債務の本旨に従った履行がなされないという状態があるだけでなく、その状態が債務者の故意あるいは過失に起因して(債務者の責に帰すべき事由によって)いる場合を意味する。通常債務不履行といえばこの意味である。債務者に責任があるときには、債権者は債務者に対して、不履行によって生じた損害を賠償してもらえる(四一五条)。  また、債務が契約から生じたものであるときには、債権者は一定の手続によって、契約を解除することもできる。(五四一条以下)。

◆履行遅滞〔債権法 総則〕🔗🔉

◆履行遅滞〔債権法 総則〕 りこうちたい  履行が可能なのに履行期を過ぎても債務者が履行をしないこと。債務不履行の一種。  債権の目的が焼失したり、履行ができなくなっているのではなく、履行しようと思えば履行できる状態にある点で履行不能とは異なる。履行期は、当事者間で決めてあることが多いだろうが、何月何日と確定的に決めてあるときには、その期限を徒過すると遅滞になり、また上京してきたら時計をやろうというように不確定な期限を決めたときには、債務者が相手の上京の事実を知った時(上京のときではなく)から遅滞になる。期限の定めがないときには、債権者が履行を催告した時から遅滞になる(四一二条)。  例えば材料を買ったのに納品しないので工場を休まねばならない場合のように、履行が遅れたために債権者が思わぬ損害を被ることがある。その場合に履行遅滞を理由として、損害賠償(遅延賠償)をとるには、債務者の側に遅延について故意・過失がなければならない(四一五条)。もっとも、金銭債務(別項参照)については特則があり、履行の遅れが不可抗力による場合でもまた、実損害の有無にかかわらず遅延利息をとることができる(四一九条)。  なお、契約に基づく債務の履行遅滞の場合には、契約を解除することもできる。(五四一条・五四二条)。

◆履行不能〔債権法 総則〕🔗🔉

◆履行不能〔債権法 総則〕 りこうふのう  債務成立の当時には履行可能であったものが、後に債務者側の故意または過失によって履行が不可能になった場合をいう。なお、不可抗力による不能であっても、それがいったん履行遅滞となった後に生じたものであるときには、結局は債務者に責めありといえる。  例えば、売買契約の当時に債務者の所有していた家屋が、買手に引き渡される前に売手の不注意で焼失した場合や、売手が第三者に二重に譲渡したうえ登記も移してしまった場合などである。  履行不能となった場合には、債権者は債務者に対して、損害賠償(填補賠償)を請求し得る(四一五条)。そしてその債務が契約に基づくものであるときには、債権者は契約を解除することができる(五四三条)。  広い意味では、債務成立当時既に履行ができない状態であった場合(原始的不能)も履行不能といわれるが、その場合はそもそも契約は成立しないので右に述べたような問題は生じない。また、債務成立後に履行が不能になった場合(後発的不能)であっても、それが不可抗力によるときには、債務は消滅してしまう。そして双務契約の場合には危険負担が問題になるだけである。

→◆履行補助者〔契約〕🔗🔉

◆履行補助者〔契約〕 りこうほじょしゃ  履行補助者という場合には、次の二つのものを含む。第一は債務者が債務の履行に当たって自己の手足のように使用する者(狭義の履行補助者)である。例えば運送会社の使用する運転手のような者で、債務者はこのような者をいつでも用いることができるが、その故意・過失についてはこれを債務者自身の故意・過失として債務不履行の責任を負わなければならない。第二は、債務者に代わって独立した立場で履行する者(履行代用者)である。  履行代用者を用いることができるのは、受寄者に代わって寄託物を保管する者(六五八条)のように原則として明文の規定または債権者の承諾のある場合に限られ(例えば復代理人の選任につき、一〇四条・一〇六条)、債務者は履行代用者の選任・監督に過失ある場合にのみ責任を負う。

→◆家事審判法〔民訴法関連法〕🔗🔉

◆家事審判法〔民訴法関連法〕 かじしんぱんほう →図 【家事審判・調停の対象事項】  新憲法は、婚姻および家族について個人の尊厳と男女両性の本質的平等を基本とすることを要求し、それに伴って民法の親族編と相続編が全面的に改正された。家事審判法は、この新しい親族・相続に関する事件を適切に処理するための手続法として昭和二二年に制定され翌年から施行された。その後数回の改正を経ている。  この法律は、第一章総則、第二章審判、第三章調停、第四章罰則に分かれ、個人の尊厳と両性の本質的平等を基本として、家庭の平和と健全な親族共同生活の維持を図ることを目的としている(一条)。  審判は、家事審判官が、参与員を立ち会わせ、またはその意見を聴いて行うが、家庭裁判所が相当と認めるときは、家事審判官だけで審判することもできる(三条一項)。  調停(「民事調停法」の項参照)は、家事審判官と調停委員で組織する調停委員会が行う。ただし、家庭裁判所が相当と認めるときは、家事審判官だけで調停することもできる(三条二項)。  これらは、家庭生活に関する事件を訴訟によらないで解決しようとするもので、家庭の欠陥を治癒して将来の紛争を予防し、既に発生した紛争は根本的に解決して善後措置を講じることを目的とする。  家事審判は、審判手続調停手続とに分類される。審判事項には甲類と乙類があり、甲類としては、禁治産(準禁治産)の宣告とその取消し(「禁治産者」「準禁治産者」の各項参照)、不在者の財産管理、失跡宣告とその取消しなど、乙類としては、夫婦の同居・協力・扶助(民法七五二条)、夫婦財産契約、離婚・婚姻取消しの場合の財産分与、親権者の指定・変更などが認められる(九条)。  審判手続は甲類・乙類どちらの事件に対しても行われるが、調停手続は甲類事件については行われない。調停の対象となるのは、甲類事件を除いた人事に関する訴訟事件その他一般に家庭に関する事件で、乙類事件も含まれる(一七条)。  これら家庭の中の紛争は、訴訟によって黒白をつけるよりは家庭裁判所によって円満な解決をつけるほうが望ましい。そこで家事審判法は、家庭に関する紛争事件について訴えを提起しようとする者は、まず家庭裁判所に調停の申立てをしなければならないと定め、調停の申立てをしないでいきなり訴えを提起してきた場合には、事件を調停手続に回すことにしている(一八条)。これを調停前置主義という。  また、この法律では履行確保の制度が講じられている。家庭裁判所の調停や審判で決められた義務を確実に履行させようとする制度である。  まず、家庭裁判所は、権利者の申出があるときは、審判や調停で定められた義務の履行状況を調査し、義務者に対してその義務の履行を勧告できる(一五条の五・二五条の二)。家庭裁判所は、審判や調停で定められた金銭の支払いその他の財産上の給付義務(例えば、離婚した夫から妻に財産分与として土地家屋を引き渡す義務)を履行しない者があるときは、義務者に対して相当期間内に義務を履行するように命ずることができる(一五条の六・二五条の二)。また、義務者が金銭の支払義務を履行したくても、権利者に直接に手渡すのは、感情的に具合が悪いことがある。  そのような場合には、家庭裁判所は、義務者から金銭の寄託を受けて、権利者にこれを交付することができる(一五条の七・二五条の二)。また、家庭裁判所に審判や調停の申立てをしようと思っても、その手続がわからないことが多い。また家庭内のいろいろな問題について思い悩んでいる人も多い。これらの人の相談に応ずるのが家事相談で、広く一般の人々に利用されている。

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