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履行確保🔗🔉

履行確保 (りこうかくほ) 一般的には、債権者が自己の債権の満足を確実ならしめるための手段・方法あるいはその状態などを意味する。法律上の狭義では、家事審判法において、家庭裁判所の審判や調停で定められた債務の履行を促進し確保するための手続をいう。本来は、家事債務についても民事執行法により強制執行ができるが(家事審判法15条・21条)、家事債務は親族間の債務関係であったり、一般に低額かつ少額の分割払いを内容とするものが多いので、強制執行手続のめんどうさや費用負担の重さなどに耐えられないなどの事情があり、強制執行をするのには適当でない場合が少なくない。そのような欠陥を是正するため、1956年(昭和31)から新設された手続をさす。この手続は履行勧告、履行命令および金銭寄託の三つをそのおもな内容としている。  履行勧告とは、家庭裁判所が権利者の申し出によって、家事債務の履行状況を調査し、義務者に対しその履行を勧告するものである(家事審判法15条の5・25条の2)。これには法律上の強制力がないから、もし履行勧告によって効果のない場合は、家庭裁判所は権利者の申し出によって、義務者に対し相当の期限を定めてその義務の履行をなすべきことを命ずることができる(同法15条の6・25条の2)。これが履行命令である。この命令に従わないときは、10万円以下の過料に処せられる(同法28条)。金銭寄託とは、家庭裁判所が、義務者から権利者に支払うべき金銭の寄託を受けて、これを権利者に渡すという制度である(同法15条の7・25条の2)。たとえば離婚慰謝料のように、当事者間での直接授受が不愉快で、債務が履行されない場合などに家庭裁判所が仲介者となるものである。 <内田武吉>

履行遅滞🔗🔉

履行遅滞 (りこうちたい) 債務不履行の一態様で、債務者が履行期に債務の履行を怠ること。たとえば買い主が売買代金を定められた日時までに支払わないと、履行遅滞となる。履行遅滞により損害賠償義務(民法415条)と債権者、たとえば売り主の契約解除権(同法541条)が生ずる。金銭債務は、別に約定がなければ年5分(商行為によるものは年6分=商法514条)の利率による遅延損害金である(民法404条参照)。債権者が契約を解除するには、相当の期間(履行するのに必要な日数で足りる)を定めて催告し、その期間内に履行がないということが必要である。  履行期に履行できなかったことについて、債務者に過失がないときは履行遅滞とならないが、金銭債務については、不可抗力であっても遅延損害金の支払義務が生ずる(民法419条2項)。また売買契約のような双務契約は、特約で一方が先履行することが定められない限り、双方が引換給付をするのが原則である。たとえば売り主の登記の移転・物の引渡しの義務と、買い主の代金支払義務は引換えで履行されるのが原則なので、相手方が引換給付に応じない限り、履行期を過ぎたからといって履行遅滞とはならない(民法533条の同時履行の抗弁権)。 <伊藤高義>

履行不能🔗🔉

履行不能 (りこうふのう) 債務者が債務の履行をできなくしてしまうことで、債務不履行の一態様である。たとえば、建物の売り主が買い主に引渡しをする前に失火によって焼失させたとか、二重売買をして登記も他に移転してしまったときは、売り主の履行不能となる。履行不能により損害賠償義務(民法415条)と債権者の契約解除権(同法543条)が生ずる。履行できなくなったことにつき、債務者に過失がないときは履行不能とならず、危険負担の問題(同法534条以下)となる。たとえば家屋の売買契約において引渡し前に類焼で焼失してしまったときは、売り主の引渡義務は消滅するが、買い主の代金支払義務はそのまま残る。なお履行不能ということばは、危険負担における給付不能の意味に用いることがあるが、一般には債務不履行の一態様としての履行不能の意味に用いる。 <伊藤高義>

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