麻薬中毒🔗🔉

麻薬中毒 (まやくちゅうどく) toxication of narcotics 薬物依存の代表的なもので、麻薬には〔1〕アヘン・アルカロイド系、〔2〕コカアルカロイド系、〔3〕合成麻薬、〔4〕カンナビノール系があり、これらの慢性中毒を麻薬中毒という。麻薬に対する精神的・身体的欲求を生じ、それを自ら抑制することが困難な状態、すなわち精神的・身体的依存の状態をいい、かならずしも自覚的または他覚的な禁断症状を認めなくてもよい。今日、わが国では麻薬取締法によって厳しい規制がなされており、麻薬中毒患者を診察した医師はただちに届け出なければならず、中毒患者の数は減ってきている。また、大麻や、合成麻薬のLSDについては、諸外国に比べるとその中毒者の数は比較的少ない。 【モルヒネ中毒】 通常、麻薬中毒の代表的なものとしてあげられる。モルヒネはアヘンより抽出した天然アルカロイドで、その誘導体である半合成のアルカロイドのヘロインやその塩類のナルコポン、パントポンがある。多くは疼痛{とうつう}や不眠などの治療として注射を受けたことや、あるいは好奇心や誘惑がきっかけとなって反復注射を行うようになり、陶酔感・恍惚{こうこつ}感を求めたり、疲労感・不快感の除去のために繰り返し、耐性も増して使用量も増え、精神的にも身体的にも依存の状態となり、中断すると激しい禁断症状をおこしてくる。自律神経の嵐{あらし}といわれるだるさ、くしゃみ、流涎{りゅうえん}(よだれ)、鼻汁、下痢、悪寒が出て、苦悶{くもん}、不安、苦痛が強く、注射を哀願したり強要するようになる。皮膚は乾燥し、顔色も悪く、るいそう(やせすぎ)がみられ、縮瞳{しゅくどう}があり、注射部位に硬結がみられる。禁断症状は中断後12〜16時間くらいして現れ、2、3日で最高となる。一般に慢性中毒者は、飽きっぽくて怠惰となり、麻薬を使えば元気になり、薬を入手するためにあらゆる手段を講ずる。意志薄弱で無力性の性格の者が中毒になりやすく、薬物が身近にある医療従事者に中毒患者が多い。麻薬中毒の治療はかならず指定された病院で行い、禁断療法を行うが、欧米ではメサドンのような弱い合成麻薬に置換して徐々に治療する方法もとっている。 【アヘン中毒】 モルヒネ中毒とほぼ同じと考えられるが、成分の関係で多少異なるところがある。アヘンはモルフィン(モルヒネ)を主成分とするが、そのほか樹脂や粘液などの乳液成分も含むため、吸収が緩徐で、作用はモルヒネより長く持続する。また、パパベリンやコデインの作用も加わる。パパベリンはモルヒネと異なり、麻酔作用は弱いが平滑筋弛緩{しかん}作用がとくに強く、呼吸中枢をやや興奮させる。一方、コデインはほぼモルヒネと同じであるが、一般に作用は弱い。量を増やすとモルヒネより興奮に移行しやすく、強直をおこす。 【コカイン中毒】 コカからとったアルカロイドであるコカインによる中毒で、南アメリカではコカ葉が興奮性嗜好{しこう}品として広く用いられている。局所麻酔薬としてかつて鼻粘膜に塗られていたが、吸入や注射で慢性中毒となり、高揚感がみられるが、ときに幻覚や妄想も出てくる。瞳孔は散瞳である。禁断症状はモルヒネほど強くない。 【その他】 大麻(カンナビノール系麻薬)は、葉を乾燥して喫煙したり(マリファナ)するほか、食べたり溶液を飲んだりするが、多くは急性中毒をおこす。アフリカ、インド、中近東、南北アメリカに中毒患者が多く、陶酔状態が主症状で、高揚感や多幸感を感じ、輝く色彩を感じたり不安になったりする。禁断症状はほとんどない。また、LSD(リゼルグ酸ジエチルアミド)は幻覚剤の一種で、極微量の内服で視覚や時間体験、自我体験、身体意識に多彩な変化を体験する。なお、大麻やLSDはモルヒネやコカインと異なり、鎮痛作用はない。→大麻 →LSD →大麻取締法 <保崎秀夫>

日本大百科 ページ 61188