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泰山府君🔗🔉

泰山府君 (たいざんふくん) 中国、山東省の東岳泰山の神に対する古称。漢代では地方州郡の太守を府君と敬称したから、泰山太守閣下の意。俗説では、この神は人間の生死、寿命、官位および死後の審判をつかさどり、生前に罪を犯した者はその魂を拘引し、地底の獄に投じて懲罰すると考えられたから、仏教の閻魔{えんま}王に相当する冥府{めいふ}の神である。日本にも入唐{にっとう}僧の慈覚{じかく}大師円仁{えんにん}(794―864)によって比叡山{ひえいざん}に勧請{かんじょう}せられ、延命をつかさどる守護神、福徳神として祀{まつ}られた。しかし中国では、泰山が五岳の第一として歴代王朝の尊崇を受け、神も東岳天斉大生仁聖帝{てんせいだいせいじんせいてい}に封ぜられ、世間にも東岳大帝とよばれるに及んで、地域の限られた泰山府君の古称は消え、わずかに晋{しん}・唐時代の古伝説にその名をとどめるに至った。 <澤田瑞穂> 【本】澤田瑞穂著『地獄変――中国の冥界説』(『アジアの宗教文化3』所収・1968・法蔵館) ▽同編『中国の泰山』(『世界の聖域 別巻1』所収・1982・講談社)

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