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章動🔗🔉

章動 (しょうどう) 太陽と月が地球に及ぼす引力の強さと向きとは、公転運動の性質を反映して、半月、半年、18.6年などの周期で規則的に変わる。これによって地球の自転が乱され、自転軸は、こまが首を振るように、引力変化の周期にあわせて重心を頂点とする円錐{えんすい}を描く運動を繰り返す。このような現象を章動とよぶ。  章動は多数の周期成分からなっているが、おもなものは、赤道面と黄道面の23度26分の傾きを原因とする半年周と半月周の章動、月の軌道面が黄道面に対して約五度の傾きを保ち、しかもその向きが18.6年の周期で変化することによる18.6年周章動、地球と月の軌道が楕円{だえん}形であるために生じる年周と1月周の章動などである。最大の18.6年周章動でさえ振幅が角度の9秒にすぎない微小な運動だが、1745年にJ・ブラッドリーが発見して以来、精密位置天文学観測の対象として追跡されてきた。章動は、地球の内部構造とりわけ地球深部の流体核の影響を強く受けるため、その性質を利用して粘性など流体核の物性を調べる研究に役だっている。木村栄{ひさし}が発見した有名な年周z項も、章動に及ぼす流体核の影響がおもな原因であった。星の視位置を予測するには、あらかじめ章動の効果を考慮に入れておく必要があるので、章動の各周期成分の理論計算値は、国際天文学連合が定める天文定数の一つになっている。→z項 <笹尾哲夫>

日本大百科 ページ 31287