道路🔗⭐🔉振
道路
(どうろ)
road
道路は太古から人類とともに進歩し、現代の自動車時代に適応した高速道路にまで近代化され、生産、流通をはじめ経済的、政治的、文化的に重要な機能を果たしている。鉄道など他の交通機関と比較して、道路を利用する場合、時間的、空間的に自由であり、日常生活に欠かせない陸上交通施設である。→道
【定義】
道路に関係ある法制が数多く現れた現在では、道路の正確な定義を行うことはむずかしい。現在、道路の定義をしている法律としては、道路法、道路運送法、道路運送車両法、道路交通法、道路整備特別措置法、高速自動車国道法、建築基準法などがあるが、いずれも規制の対象が異なるため、これらの法律において定義されている道路の観念はかならずしも一様ではない。すなわち、道路法によれば、道路とは、一般交通の用に供する道(自動車のみの一般交通の用に供する道を含む)で、高速自動車国道、一般国道、都道府県道もしくは市町村道をいうとしている。道路法以外の前掲の諸法律のうち、高速自動車国道法および道路整備特別措置法を除くその他のものはすべて、これよりやや広い定義を下し、道路法上の道路のほかに自動車道および一般交通の用に供するその他の場所をも含めて、これを道路と観念している。広い意味での道路は、これを公道と私道とに分けることができる。公道とは、行政主体が自己の行う行政の内容として、一般交通の用に供するため築造し、または認定した道路をいう。これに対して私道とは、私人が一般交通の用に供すべく築造し、または事実上一般交通の用に供している道路をいう。
【役割】
道路は他の各種交通機関と異なり、交通を処理する機能のほかに多様な機能をもつ。たとえば、都市において道路はもっとも重要なオープンスペース(空間)である。その空間は都市における景観、防災などと密接不可分な関係にあり、またその道路空間を利用した下水道、上水道、電気などの都市の公益サービス施設の収容や、大都市における地下鉄などの整備もこの道路空間の利用なくしてはありえない。このように道路はその空間そのものが社会経済活動の各面において多様かつ重要な役割を果たしているが、その本来の機能である交通施設として今日の経済社会で果たす役割もまたきわめて大きいものがある。道路交通の役割の増大を支えた基本的な要因はまず、道路が高速自動車国道などの幹線道路網から身の回りの道路まで一貫したネットワークをもち、他の交通機関にはない普遍性とドア・ツー・ドアという特性をもつことによる。この面において、末端において道路交通に依存し、積み換えなどの過程を伴う他の交通機関と決定的な差異がある。さらに、このような道路のネットワークは、自動車のもつ機動性、随時性などの多くの特性と相まって高度な可動性を求める日本の社会経済の要請にこたえている。近時エネルギー制約などの観点から、自動車交通への依存からの脱却、鉄道など他の大量輸送機関への転換を指摘する向きもあるが、交通機関の特性や、こうした経済社会が求める可動性への要請を踏まえた現実的な検討が必要とされよう。
【歴史】
〔世界〕 原始時代の道路は、人々が果実、草根などの食料を採取する場合、迷わないように木の枝を折り幹に傷をつけたり、石塊を積むなどの目印を設けることから始まり、野生動物の通路を利用するなど、自然に踏みならされた狭い曲がりくねった通路にすぎなかったと思われる。新石器時代に入り、農耕、牧畜が発達し、多量の食料生産が可能となって人類の生活は安定した。各方面での人類の活動が可能となり、文明の段階に入って人工的道路もつくられるようになった。すでに紀元前3000年ごろには、のちに、こはく道路とよばれる交易路があった。これは、こはくの産地であるバルト海沿岸地方と地中海沿岸地方を結ぶものであった。エジプト、メソポタミア、インド、中国など古代文明の発祥地では、神殿や宮殿に通ずる道路が石材で舗装されていたことが遺跡で知られる。最古の長距離道路はペルシア湾からメソポタミア、小アジアを経て地中海に至るロイヤルロードで、前14世紀ごろメソポタミア地方で勢力があったヒッタイト王国によって建設、整備された。またシルク・ロードは、前4世紀ごろから後16世紀になって海洋交通が発達するまでユーラシア大陸を横断し、東西文明の交流に役だった。
ローマ時代に入って道路技術は目覚ましい発達を遂げた。ローマ帝国は、イタリア、フランス、スペインからイギリス(ブリタニア島)、小アジアの西部、北アフリカにわたる広大な領土を統治し治安を確保する必要から、いわゆるローマ道を築きあげた。ローマ帝国の最盛時代には幹線道路の延長は9万キロメートル、下級の道路を加えると30万キロにも達し、ローマから放射する幹線は23本にも及んだ。ローマ道のもっとも注目に値する点は、それが全体として統一ある計画のもとに整然とした道路網を形づくっていたところにある。ローマ道はローマ帝国の統治、治安の確保だけでなく、ローマ文化の普及にも役だち、「すべての道はローマに通ず」とまでいわれた。
ローマ帝国が衰退して東西に分裂し、5世紀後半に西ローマ帝国が滅びたのち、おおよそ1000年の間は中世の暗黒時代とよばれ、道路交通は著しく後退し、ローマ時代の高度に発達した道路建設技術は忘れ去られた。長距離の道路交通にはローマ時代の道路が用いられ、道路の建設は狭い範囲を結ぶ局地的なものにすぎなかった。中世紀で特筆すべきことは、南アメリカのペルーのインカ帝国が、ローマ道にも比すべき大規模な道路を建設したことである。この大道路網はアンデス山脈の急峻{きゅうしゅん}な山岳地帯を縫って広がり、その構造や工法も優れたもので、路面は石塊で舗装され、アスファルト材料が盛んに用いられた点はローマ道と比べたときとくに注目される。
ルネサンス以後、都市のギルドと結び付いて道路整備も徐々に進められていったが、その本格的建設は産業革命以後のことである。18世紀の終わりにイギリスで始まった産業革命によって交易の範囲と量は急速に拡大し、交通需要に対応する道路建設の必要が生まれた。1764年フランスではトレサゲTr?saguetが砕石道工法を確立した。続いてイギリスのテルフォードT. TelfordとマカダムJ. L. McAdamはそれぞれ1805年、15年ごろに優れた砕石道を案出した。とくにマカダム工法は安価で、当時の馬車交通にも耐える優れたものであった。アメリカ大陸においては、合衆国政府が郵便逓送{ていそう}と貨客の馬車輸送発達のために道路建設奨励政策をとり、諸州もまた、それぞれの経済力強化のために交通改良政策を進めたので道路整備は著しく促進された。とくに東部地方を中心に発達したターンパイク道路は、線形的にも構造的にも優れた道路を広く普及させるもとになった。しかし、このようにして発達した馬車による道路交通も、イギリスのスティーブンソンによって発明された鉄道が1830年以降急速に発達したため、その発達の速度を一時緩めることになった。
19世紀の終わりになると、ダイムラーらによって内燃機関が実用化され、同じころダンロップによって発明された空気入りタイヤと組み合わされた自動車は、やがて第一次世界大戦でその有効性が認められたこともあって、陸上交通の手段として急速な発展をみた。ほこりをあげるゴムタイヤに対処するため、まずタール類による舗装、続いて重荷重にも耐えるセメントコンクリート舗装が普及した。
本格的な高速道路が実現したのは、近世に至るまで比較的道路整備の遅れていたドイツであった。1926年に通過都市の頭{かしら}文字をとってハフラバHAFRABAとよばれた約800キロメートルの高速道路建設構想が出され、続いて34年には国土計画上の必要から国策として1万4000キロに及ぶアウトバーンの建設計画がスタートし、第二次大戦前までに3859キロ(うち西ドイツ分2100キロ)が完成した。戦後、ドイツは東西に分割されたが、西ドイツでは1950年から道路事業が再開され、79年には約4500キロに延長されている。アウトバーンの存在は戦後における西ドイツの急速な経済復興の大きな原動力となった。現在ヨーロッパ経済圏を一体とした高速道路網計画に組み込まれ、引き続き建設が進められている。
一方アメリカでは、1921年には連邦補助一級道路体系が創設されて幹線の改良舗装が進み、その後の自動車道路整備の政策を方向づけた。戦後、1957年連邦補助道路法によって、連邦政府の補助により州際道路網を建設する計画が定められ、6万6000キロの州際道路の完成を目ざしている。またアメリカでは伝統的な有料道路による高速道路の建設が行われており、その料金収入額は世界一である。
〔日本〕 一方、日本は周囲を海に囲まれ、しかも地勢が急峻で、山岳や急流に妨げられて道路の発達はかなり遅れ、古く遠距離の交通は海運に頼ることが多かった。とくに貨物の輸送は江戸時代まで海運に依存していた。初めて系統的な道路がつくられたのは大化改新(645)のころで、中央集権的な支配体制を全国的に拡大し、徹底化しようとする意図をもって道路網の整備が進められ、7世紀から8世紀半にかけて畿内{きない}から北海道を除く全国の主要地に通ずる陸路ができたと思われる。また、平城京や平安京の建設には大掛りな都市計画が行われ、整然とした街路網が建設された。その後、平安時代から戦国時代まで道路の改良、発達はほとんど認められない。織田信長が天下統一に着手するに至ってふたたび幹線道路が整備されるようになった。江戸時代に入ると、東海道、中山道{なかせんどう}、日光街道、奥州街道、甲州街道の五街道をはじめ、多数の脇{わき}街道も整備され、一里塚{いちりづか}も備わり道路網が発達した。参勤交代の制度は、ある程度全国の主要道路の改良に役だったが、江戸時代の交通は徒歩、乗馬、駕籠{かご}などが主で、車としては牛車、大八車{だいはちぐるま}などがあった程度で、路面築造の技術はほとんど進歩しなかった。
明治に入って、社会制度の根本的な変革に伴い道路はすべて公道となり、乗用馬車の輸入によって、ようやく道路改良の兆しが現れた。1872年(明治5)東京・銀座通りにはサクラ並木を植え、車道に砂利を敷き、歩道はれんがと板石で舗装する近代的な道路がつくられた。76年太政官{だじょうかん}布告で国道、県道、里道の三等級を定めた。85年、東京・浅草の蔵前{くらまえ}通りで近代的な砕石道の築造を試みた。86年内務省訓令で道路築造標準を制定し、マカダム道路を標準工法とした。72年新橋―横浜間に鉄道が開通し、その後長く鉄道の普及発達に力が注がれ、近代的道路の建設は大都市内のごく一部に限られた。大正初年ごろから自動車の数が増し、ふたたび道路の建設、整備に注意が向けられ、1919年(大正8)道路法が制定され、国道、府県道、市町村道などの等級が定められた。また同年、国道、府県道の改良30年計画がつくられたが、この計画は関東大震災(1923)で中断された。大震災の復興事業を手始めに舗装道路が全国の都市に普及し、地方道の全面的な改良も幾たびか計画された。しかし、実際の道路改良事業は1930年代の不況期に失業救済、時局匡救{きょうきゅう}などの名目で行われ、引き続き全国的な事業が進められる予定であったが、第二次大戦で中断された。このため、戦前の日本の道路は一貫した計画のもとに建設、改良がなされたことがなく、都市主要街路の舗装、架橋、国道、府県道の初歩的改良などが行われたとはいえ、欧米と比べて著しく立ち後れていた。
第二次大戦により荒廃しきった日本の道路は、まず維持、修繕を中心にその整備が始まったが、1952年(昭和27)になって道路法が大改定され、道路行政の基本体系がつくられるとともに有料道路制度を定めた。道路整備特別措置法(旧法)が公布された。時あたかも復興期にあった日本経済が、その基盤的施設としての道路の緊急整備を必要とした時期で、53年には道路整備の財源等に関する臨時措置法が成立して、ガソリン税収入が特定財源として道路事業に充当されることになり、これを契機に54年度を初年度とする道路整備五か年計画が初めて策定された。やがて56年日本道路公団が設立された。また同年には道路整備特別措置法も改正され、本格的な有料道路整備事業が日本道路公団の手によって進められることになった。こうして、特定財源制度と有料道路制度という、その後の道路整備の二大支柱ができあがり、59年度から名神高速道路の建設が始まり、高速道路時代を迎えることになった。全国高速自動車国道網を形成する32路線7600キロメートルの予定路線を定めることとする国土開発幹線自動車道建設法が57年に制定され、以降、高速自動車国道の整備が全国的に進められ、東名、名神、中央道、東北道、中国道、九州道といった縦貫道の整備が進められた。→高速道路
【現況】
第二次大戦後の四半世紀にわたり、くふうを重ねながら道路整備の推進が図られた結果、日本の道路は舗装率を中心にいちおうの進捗{しんちょく}をみた。しかし、経済の拡大と国民生活水準の向上に伴い飛躍的に増大した道路交通需要と対比してみた場合、円滑さや安全性の確保、生活環境の改善など各面において今後の道路整備にまつべき課題が山積している現況にある。
日本の道路は、歴史的にみると徒歩の時代から短期間に自動車時代へ移行したため、通過交通をさばく幹線道路の多くが市街地を貫通し、またその道路幅員も狭いなどの悪条件を背負っている。さらに加えて近年の都市化の進展、環境制約の高まりなど道路整備を取り巻く環境には厳しいものがある。
現在、このようなことから第九次道路整備五か年計画(1983年にスタート)に基づき、道路交通の安全の確保とその円滑化を図るとともに、生活環境の改善および活力とゆとりのある地域社会を形成するため、高速自動車国道から市町村道に至る道路網の計画的な整備が進められている。同計画においては、総額38兆2000億円をもって、〔1〕道路交通の安全確保、〔2〕生活基盤の整備、〔3〕生活環境の改善、〔4〕国土の発展基盤の整備および〔5〕維持費の充実にかかわる各施策について、それぞれの重要性を総合的に勘案して整備を推進することにしている。
日本の道路整備の現状から今後の道路整備の課題のいくつかをみてみよう。(1)一般国道、都道府県道のうち、2車線以上の改築済み区間は53%となっているが、交通渋滞の著しい区間が約5%、9300キロあり、円滑に通行しうる区間は全体の48%にすぎない。(2)一般国道、都道府県道ですら、本舗装済み区間は約48%にすぎず、簡易舗装済み区間が約34%ある。(3)一般国道、都道府県道の総延長は約17万キロであるが、このうち幅員5.5メートル未満の車が満足にすれ違えない区間がほぼ半分の7万キロを占めている。(4)地域の住民の足として重要なバス路線は約13万3000キロであるが、このうち満足にすれ違えない区間は5万9000キロに及んでいる。また、都市およびその周辺部で交通混雑のためバス運行速度が著しく低下し、定時性の確保が困難な区間は1500キロに及んでいる。(5)全国で歩道などを設置する必要のある道路は約24万キロであり、このうち10万キロは緊急に歩道などが必要な区間である。24万キロのうち32%が未整備の状況にある。また、すでに整備された歩道のうち幅員2メートル未満の狭い歩道が半分を占め、質的にもきわめて不十分な現状である。
このほか、防災上の危険箇所、震災上問題のある老朽橋など道路交通上隘路{あいろ}となっている箇所は数多く残されており、日本の道路整備水準は量的にも質的にも今後の整備にまつところが多い状況にある。
【種類と構造】
一般に道路といわれているものは一般公衆の通行の用に供される施設をさしており、道路法に基づく道路のほかに、いわゆる私道、林道、農道、あるいは道路運送法に基づいて運営されている一般自動車道なども含まれている。しかし、日本の基本的な道路網を形成しているものは道路法に基づく道路であり、(1)高速自動車国道、(2)一般国道、(3)都道府県道、(4)市町村道の4種類をさし、トンネル、橋、渡船施設、道路用エレベーターなどの道路と一体となってその効用を果たす施設または工作物、および道路の付属物でその道路に付属して設置されているものを含んでいる。高速自動車国道は、自動車の高速交通の用に供する道路で、全国的な自動車交通網の枢要部分を形成し、かつ政治、経済、文化上とくに重要な地域を連絡するものである。一般国道は、高速自動車国道とあわせて全国的な幹線道路網を構成し、かつ国土を縦断し、横断し、または循環して、都道府県庁所在地(北海道の支庁所在地を含む)その他政治上、経済上、または文化上とくに重要な都市を連絡するものである。市町村道は、市町村の区域内に存する道路で、市町村が認定したものである。都道府県道のうち地方的幹線道路網の枢要部分を構成し、国道あるいは主要な都道府県道を相互に連絡するものを主要地方道という。
道路の構造は直線部と曲線部とで異なり、またトンネル部では特別な構造をもっている。道路構造の基本になる横断形状は、車道、路肩{ろかた}、中央帯(中央分離帯と側帯によって構成されている)からなり、街路ではこのほかに歩道、側溝{そっこう}が幅員中に入る。直線部には、路面排水のためた中央部から路肩部に向かい1.5〜2.0%の横断勾配{こうばい}がつけてある。曲線部は、自動車が遠心力を受けて横滑りしないように横断形状を片勾配にし、かつ自動車の走行上、直線部より広い車線幅を要するので、車道幅員を曲線半径に応じて拡幅する。直線部から円曲線部に入るには、ハンドル操作を円滑にするため、両者の間に緩和曲線を入れる。緩和曲線にはクロソイド曲線が多く用いられる。平面曲線部および縦断曲線部はともに見通し距離が不十分になりがちなので、走行上の安全を確保するため、線形の修正あるいは障害物の除去を行って、必要な見通し距離が得られるようにする。上記のような種々の幾何構造は、道路の設計速度を大きくするほど、走行安定上すべてゆったりした高級なものにする必要があるので、建設費が高くなる。
道路各部の構造寸法と舗装および付属設備の設計は、道路構造令に基づいて設計速度、設計交通量、その他必要条件を満たすように行う。道路の構造設計は、まず道路中心線の平面形と縦断形の決定、安全見通し距離の確保、横断形状と交差部の細部設計、および舗装の種類と、その断面の施設設計などを行う。そのほかトンネル、橋梁{きょうりょう}、盛土{もりど}、切土{きりど}部の道路本体部、駐車場、ターミナル設備の設計や防護柵{さく}、標識、標示、信号、照明、植樹などの計画、設計が必要である。
【計画】
一般の道路計画においては、(1)計画の目的および目標の設定、(2)計画を構成する諸要素および環境的諸要素の相互関連の把握、(3)いくつかの計画案の作成、(4)計画案の評価、の各過程を経て、必要に応じてフィードバックのうえ検討され、適切な計画案が採択されることになる。一般に道路の長期計画は、(1)道路整備の目的の明確化、(2)目標年次の設定、(3)計画の前提となる全国的・地域的構成、その他諸条件の設定、(4)道路整備の目標および課題の設定、(5)道路網の検討、(6)個々の道路計画の検討、(7)長期計画の作成と評価、という手順を経て策定される。このような道路計画の策定にあたっては、まず、道路および道路交通の現状を明らかにし、問題点を発見し、その対策を検討することから始めなければならない。道路計画のための調査項目は、施設現況調査と交通調査とに大別される。施設現況調査としては道路現況調査、橋梁・トンネルなどの構造物現況調査および法面{のりめん}現況調査などがあげられる。交通調査は、道路を利用する交通の現況や、道路交通に付随して生じる交通問題の実態を把握するために行うもので、交通量調査、起終点調査(OD調査)、走行速度調査、交通事故調査、交通騒音調査、車両重量調査、自動車経路調査、交通意識調査などが実施されている。このうち組織的に行われている交通量調査としては、全国道路交通情勢調査、交通量常時観測調査、交差点交通量調査がある。また起終点調査は、自動車の運行(トリップ)ごとの出発地、目的地、運行目的、積載品目などを知ることにより自動車交通の質的内容を把握することを目的としている。
道路整備を秩序あるプログラムのもとに効果的、効率的に遂行するためには、大都市圏、地方圏、あるいはその周辺を一体とした地域などについて、総合的な地域計画の一環として、広域的な観点から道路網全体としての将来の道路交通需要を的確に把握することが必要である。このための基礎資料を収集するため、人口・経済および土地利用調査、経済調査、交通現況調査(パーソントリップ調査、物資流動調査、道路交通情勢調査)などが実施される。次に、これらの諸調査によって得られたデータを用いて将来の交通量を推計する段階になるが、現在ではOD表に基礎を置いた総合的推定法が用いられている。この推計モデルは、OD調査、発生交通量の推定、分布交通量の推定および交通量の配分の4段階からなっている。
道路の路線計画においては、道路の路線位置および構造の設定にあたり、工学的判断のみならず行政的判断も含まれる点に留意する必要がある。それは、道路が一般公共の用に供される施設であると同時に、国土・地域・都市計画などと一体的に計画されなければならない関係にあり、さらに道路の利用が直接間接に社会活動に大きく影響するからである。計画道路の路線選定とは、考えうるいくつかの比較路線を設定し、概略設計のうえ、地形、地質、土地利用との関係などにより優劣判定を行って路線の位置と概略の構造を定めることで、おおむね次のような手順で行われる。(1)計画の基本条件の設定 現在の交通状況の問題点、計画の策定を必要とする具体的な土地利用などの周辺条件を整理し、計画すべき道路の性格、計画交通量、構造規格などの基本条件を設定する。(2)比較路線の設定 航空写真または地形図を用いて、考えうるいくつかの路線を描き、平面、縦横断の予備設計を行う。(3)路線調査 路線に沿った全般的な地質・土質・気象条件、地下水などの調査を行う。(4)重要構造物等調査 トンネル、長大あるいは特殊基礎の橋梁などの重要構造物が計画路線のなかに予想される場合には、その部分の地形、地質などについての精度をあげた調査を行い、必要に応じて概略の構造を検討する。(5)関連する計画、事業などとの調整 計画路線の配置と土地利用のバランスを調査し、建設の際に関連を生ずる他の事業計画との調整などを行う。(6)比較路線の評価と計画路線の選定 以上の各調査をあわせて、比較代替案ごとに建設費(必要に応じて維持管理費あるいは費用便益を考慮に入れる)と、その各計画路線の配置と利用上の適合性との関係、および投入しうる財源などを含めた総合判定を行う。
【設計】
道路各部の構造寸法と舗装、付属設備の設計は、道路構造令に準拠して設計車両、設計速度、設計交通量、設計容量の基準値に基づいて行う。一般に設計基準に示されている構造規格は多くの場合に地方部と都市部を分け、地方部においては地形に応じて平地部、丘陵部、山地部に区別して規定を定めている。道路構造令(1970)では高速自動車国道および自動車専用道路とその他の道路とに大きく二分し、それぞれ地方部と都市部に応じて、前者を第1種と第2種に、後者を第3種と第4種に区分し、地方部の道路はさらに平地部と山地部に分け、おのおのの計画交通量あるいは沿道地区の状況に応じて第一級から第五級までの構造規格を規定している。道路設計の際の設計速度は同じく道路構造令に規定されている。道路の見通し距離、幅員、曲線部や勾配部の構造などはこの設計速度に基づいて決定される。交通量の多い、あるいは将来交通量の急激な増加が予想される道路および街路においては、設計交通量にあわせるよう道路の設計容量を決定することがきわめて重要となってきた。道路の容量は、道路幅、見通し距離、車種および混合度、走行速度などの諸条件によって大きく変化する。交差点における容量はその前後における接続道路の容量に比べて著しく低くなるから、とくに合理的な設計が必要である。
道路の幾何学的寸法を設計するにあたって、自動車の走行を安全かつ快適ならしめるよう道路の中心線形、横断形状を決定し、勾配部や曲線部あるいは交差部の設計を行うことが必要である。まず道路交通の安全を保ち容量を低下させないようにするため、十分安全な距離を前方に見通しうることが必要である。この見通し距離は道路構造令によって規定されている。中心線の形は、地形によく順応し、風景と調和し、なるべく緩やかに変化させ、急な変化を避けるとともに、単調な長い直線区間もまた好ましくないので避けるようにする。道路の横断形状は、車道路面、路肩、排水側溝、切取法面あるいは盛土法面などからなっている。車道路面は普通二車線以上とし、交通量に応じて適当な幅をもち、重い自動車が高速で走ることができるように堅く平らな路面工または舗装が施されていて、降った雨水を排除するため1.5〜6.0%の横断勾配をつけておくことが必要である。道路が互いに交差する所では、一般に交通量が少ないときはごく普通の平面交差とし、交通量が多くなると信号をつけて交通制御をする。さらに交通量の多い交差部は立体交差とする。そのほか、橋梁、トンネルなどの付帯施設、駐車場、ターミナル施設、ガードレール、沿道の整備、標識、区画線、信号、照明、植樹などの設計があり、膨大な一連の作業を必要とする。
自然景観の保護、自然景観との調和、道路景観の造成、交通公害の緩和、道路および休憩施設などの機能の向上、都市美の造成、災害の防止などを図るため、最近においては景観設計の重要性が認識されるようになってきている。平面線形の視覚的連続性、法面の形状(ラウンディング、グレーディング)など道路景観設計の際に現れてくる問題は大別して、道路の線形、土工形状、植栽、周辺の地形・地物に関連したこととして分類される。問題は、たとえば土工形状と植栽との間の調和関係という形で現れてくる。このような相互関係にも道路設計の際に留意しなければならない。
【施工】
道路工事の計画設計書と図面が作成され、工事に必要な資材、労務、機械、施設の量が積算され、所要の経費が見積もられて、道路工事の発注者と受注者の間で請負契約が結ばれると工事の実施に入る。着工に先だち、支障となる家屋、物件の除去や移転、用地の買収を行う。(1)土工 道路は本来自然の地表面に沿って設けられる細長い構造物で、人や自動車の通行に適する線形と勾配を保つため、地形に応じて地表面を削り取ったり、地表面に盛土を行って構築する。この切土、盛土を土工といい、道路工事の大部分を占めるので、平面線形、縦断線形、施工基面を適切に設計し、できるだけ土工量を少なくする。深い切土や高い盛土は施工を困難にし、将来その維持補修を困難にすることがあるので、できるだけ避けるようにする。土工では各種の大型土工機械が活躍する。その主力はブルドーザー、スクレーパー、パワーショベル、ダンプトラックであるが、盛土を締め固め安定性を高めるためにはタイヤローラー、振動ローラー、ランマーなどを用いる。地盤が軟弱で、盛土荷重のため沈下が大きいと予想される場合は、良質の土砂で置き換えたり、排水で圧密を促進するなどの対策工法をとる。切取り、盛土の斜面は、張り芝、モルタル吹き付け工、その他の被覆工を行い、崩れ落ちたり洗い流されたりしないように防護する。また舗装の基礎となる路床、路盤の部分は、良質の砂利を選び、十分締め固め、かつ排水をよくする。一般に道路の破壊は直接間接に水に起因することが多いので、道路各部の排水には十分注意する。(2)路面工および舗装 道路の路面は走行する車両の車輪荷重を直接受けるもっともたいせつな部分で、いつも平らで滑りにくく、どのような天候のときでも十分な支持力をもち、水はけがよく防水性に富んでいて、路面の下部にある路盤や路床{ろしょう}を保護できるものでなければならない。交通量があまり多くない道路では砂利道が用いられる。しかし砂利道は、交通量が多くなると傷みやすく、維持に手間を要するので、簡易舗装にしたほうが経済的である。日本ではアスファルト乳剤を用いた浸透式マカダム工法が広く用いられる。高級舗装にはアスファルト工法とコンクリート工法とがある。いずれも高速の重交通に適する工法で、路盤から表層にわたって厳重な設計施工をすることが要求される。
【高度情報化社会への対応】
日本は、現在、高度情報化社会に向けて大きな変革期を迎えようとしているが、このような高度情報化社会への流れのなかで、新たに基盤的な施設として、光ファイバー網などの整備が必要となるが、その際、高速道路から生活道路に至るまで、ネットワークを構成している道路の情報搬送としての役割に対する期待はきわめて大きい。
道路は、かねてから人や物の移動に伴って情報を伝達する機能を果たしてきた。また、人の移動、物流の効率化を図るため、道路管理者として、道路交通情報の提供を行ってきた。今後は、さらに情報の新しいニーズに対応して、道路空間の適正利用を図りながら、道路と情報が結合した新たな国土基盤を創出していくことが必要であると考えられている。
このため、具体的には、ニューメディアのケーブルを集合して地中に埋設するキャブシステムの整備、ニューメディアを利用した道路交通情報サービスの充実、多様な情報を伝達するためネットワークの構築などについての検討が進められている。
【交通安全】
第二次大戦後増加の一途をたどってきた交通事故死傷者は1970年(昭和45)をピークに減少傾向に転じたものの、80年においても死者8760人、負傷者約60万人に及んでおり、憂慮すべき事態は依然として解消されていない。交通事故の防止と交通の円滑化を図るため、交通安全施設等整備事業により、歩道、自転車歩行者道、防護柵、道路標識などの交通安全施設の整備が進められてきたが、81年度は第三次特定交通安全施設等整備事業五か年計画の初年度として、歩道、自転車歩行者道などの整備を最重点に交通安全施設のいっそうの整備充実が図られた。なお81年度においては、従来の事業に加え、歩行者優先の「コミュニティ道路」の整備、および道路情報提供装置の整備が新たに実施された。→交通安全対策
【沿道環境の改善】
都市の幹線道路の沿道の居住環境については、近年の自動車交通量の急激な増加と車両の大型化などにより騒音・大気汚染などによる生活環境の悪化という問題を引き起こしており、道路環境対策の面から道路整備に対する要望も高まり、道路環境対策は道路行政にとって大きな課題となってきている。このため、既存の道路およびその沿道において環境保全対策を行うほか、道路の新設および改築にあたっては今後とも環境影響評価を行うなど環境保全に配慮していくことが必要である。道路整備による環境対策としては、既成市街地に集中する自動車交通を分散し、環境改善に資するためのバイパス、環状道路などの整備のほか、環境施設帯の設置など、沿道環境に配慮した道路構造の採用、道路の緑化および良好な路面の保全などがある。また沿道における対策として、用途地域の指定など都市計画による沿道にふさわしい土地利用への誘導のほか、道路整備の一環として、一定の緩衝建築物の建築主に対する道路管理者による建築費の一部助成などの制度化が講じられている。しかし、道路騒音については、なお問題が残されており、とくに夜間に大型車が多く通行する幹線道路では、沿道の環境を保全しつつ、その本来の機能を確保するための総合的な騒音対策の確立が強く要請されている。このため現行施策の適切な遂行とあわせて、沿道の土地利用を道路と調和した方向に体系的に整備していくための総合的な制度を創設することとし、1980年(昭和55)5月に「幹線道路の沿道の整備に関する法律」が公布され、同年10月に施行された。
道路整備のような大型プロジェクトによって引き起こされる環境破壊は、いまや国際的に深刻な社会問題として受け止められている。しかし文化の発展、社会の進歩に伴って、交通網の整備、土地利用の高度化、水資源の開発などに対する要請は今後ますます高まってくるものと考えられる。もちろん、これらの開発計画は地域環境に適合し、周辺住民の合意の得られるものでなければならない。このためには、開発計画に伴う環境アセスメントの考え方を確立するとともに、その手法の発展を図ることが必要である。アメリカでは1969年に国家環境政策法(NEPA)が制定され、人間環境の質に著しい影響を与えるおそれのある連邦政府の開発行為に対しては環境影響報告書の作成が義務づけられた。日本においても71年(昭和46)に環境庁が設けられ、環境行政が推進されるようになった。
現在、いろいろな環境項目のなかで道路計画で問題となっている項目は、地域の人々の生活環境、あるいは自然環境に関するものであり、道路のマイナス影響といわれるものが多い。一方、道路の直接効果あるいは間接効果といわれるものは、地域経済・社会ひいては国民経済・社会全般に関するもので、道路のプラスの影響と考えられるものが多い。環境アセスメントでは、このような二つの異なった側面から生ずる影響について評価を行う。その際、具体的な環境影響評価項目ごとに道路整備事業の実施による影響を予測し、結果を評価することになる。こうした環境アセスメント手法としては、アメリカの環境影響報告書のように記述式による方法のほか、重ね合わせ(オーバーレイ・マッピングoverlay mapping)による方法、マトリックスmatrix(行列)による方法、評価関数を用いる方法、重要度を重みづけして評価する方法などが開発されている。 <吉川和広>
【社会資本としての道路】
国民生活における文化的価値の追求が積極化し、生活の質的充実を求める傾向が高くなっている現代では、道路の諸機能も多角的に展開されることが要請される。従来の道路機能は、社会的・経済的機能のみが重視されていたが、現在では、さらに環境的・防災的・都市空間的機能や、観光的・文化的機能が付け加わる。道路を社会資本としての機能から分類すれば、生産基盤関係、生活基盤関係および国土(または環境)保全の社会資本として区分される。しかし、現実には、いくつかの機能が混在する道路が多い。なお、道路整備によってもたらされる直接便益(走行費の節約、輸送時間の短縮、交通事故減少など)ならびに間接便益(流通経済の合理化効果、地域開発効果など)という概念は、道路の費用・便益分析の際に利用されてきたが、社会資本としての道路機能からみれば、生産基盤関係の視角に重点を置いたものである。→社会資本
【道路網体系と生活圏】
日本では、1960年代後半に入って、国土縦貫型高速道路を骨格とする全国幹線ネットワークの本格的整備が始まる。その後、2回にわたる石油ショックにもかかわらず、モータリゼーションの進展著しく、1984年度(昭和59)末の自動車保有台数4636万2874台、84年度の道路投資総額6兆4000億円と、ともにアメリカに次いで世界第二位に達している。しかし、道路交通網体系のなかで高速道路や新幹線という新交通ネットワークの整備が東京指向型で先行したため、地方生活圏は巨大都市圏に直接・間接吸引される形となった。そのため、地域特性を生かした道路整備が困難となり、地域における伝統的な生産や生活の場が失われていった。旧西ドイツの連邦幹線道路のネットワークが、高速道路を含めて、いわば多角分散的に配置されたのとは対照的である。
すなわち、縦貫型高速道路を骨格とする全国幹線ネットワークが整備される過程で、これを補完するものとして、一般国道、主要地方道、一般府県道、さらには幹線市町村道(市町村道延長の2割)がサブ・ネットワークとして再編成された。その結果、高速道路沿線で、中枢管理機能の高い既成の大都市、府県庁所在都市、その他の地方中核都市は、交通渋滞、混雑区間(混雑度1.0以上、つまり交通量が道路交通容量を上回る状態の区間)の増大にあい、一般国道の二次改築、バイパス建設、大都市環状道路の整備が要請されてくる。
道路現況の国際比較によれば、日本は、高速道路の実延長でドイツ、イタリア、フランスよりも劣る。しかし、道路密度(1平方キロメートル当りの道路延長)は主要国のなかでもっとも高い。もっとも日本の道路延長の84.5%(1985)は市町村道である。
【道路行政】
道路の新設、改築、維持、修繕その他の管理に関する権能をもつ者を道路管理者というが、道路の包括的な管理のための費用は、道路管理者が負担するのが原則とされている。すなわち、現行法上、高速自動車国道および指定区間内の一般国道は建設大臣(国)、指定区間外の一般国道は都道府県知事(政令指定市長を含む)、都道府県道は都道府県(政令指定市を含む)、市町村道は市町村が道路管理者とされている。なお、指定区間外の国道の管理は、国の機関委任事務である。また、現実の費用負担は管理主体とかならずしも合致しているわけではない。日本の道路事業の事業主体別投資額の構成比では、国28.2%、地方(都道府県・市町村)71.8%であるが、経費負担別投資額の構成比では、国費(公団などの事業費を含む)51.8%、地方費(都道府県費・市町村費)48.2%となっている(1984年度)。これは、道路の国庫負担(補助)制度があるためである。
【道路財政】
国を事業主体とする道路事業は、〔1〕日本道路公団、首都・阪神両高速道路公団、本州四国連絡橋公団が財政投融資などの借入金に基づいて行う有料道路事業、〔2〕一般国道を対象とする国の直轄事業に分かれる。道路四公団は、その借入れを財投資金(公団債)と縁故債によっているが、資金コストを一定水準に保つため、政府出資金(四公団)と政府利子補給金(日本道路公団)が支出されている。高速自動車国道の建設運営のため、1972年(昭和47)以来、従来の路線別採算制にかえて全国画一料金プール制が採用されている。しかし、1980年代は横断道の本格的整備段階に入り、2〜3年ごとの料金改定が必要とされる趨勢{すうせい}にあり、利用交通量、採算性の観点からの見直しが課題とされている。
道路整備事業のうち国庫負担にかかわる分は、国の直轄事業、および地方公共団体が国から補助金を受けて行う補助事業がある。この国庫負担の充当財源は、特定財源(揮発油税収入全額と石油ガス税収入の2分の1の額の合算額)と一般財源からなる。昭和50年代の特定財源比率は年平均約9割である。地方公共団体が事業主体となって実施する道路整備事業(普通会計分)には、補助事業と地方単独事業(地方費のみによってまかなわれる事業)がある。地方費の充当財源も、特定財源と一般財源からなる。1954年度(昭和29)から揮発油税が国の道路整備のための特定財源とされて以来、これにあわせて徴収される地方道路税が一定の譲与基準(道路の延長・面積)によって都道府県および指定市に道路財源として譲与されてきた。1976年度からは市町村(特別区を含む)にも一部譲与されることになり、このため、地方の道路特定財源(地方道路譲与税、石油ガス譲与税、自動車重量譲与税、軽油引取税、自動車取得税など)が道路費に占める比率(特定財源比率)は、1970年代後半には40%を超えるに至った。しかし、特定財源の中心をなすガソリン課税(揮発油税・地方道路税)の国・地方間の配分割合は、依然として85対15のままで推移している。
日本の市町村道整備の立ち後れの原因は、なによりも財政的要因による。市町村道整備事業では、原則として都市計画街路と幹線市町村道のみが国庫補助事業の対象とされるが、一般市町村道は単独事業で行われ、後者の比重のほうが大きい。居住環境での生活道路のシステム化のためにも、市町村道路目的税源の拡充が望まれる。→公共事業 →自動車交通 <高橋 清>
【本】松尾新一郎編『道路工学』(1971・山海堂) ▽米谷栄二・内海達雄著『地域および都市計画』(1972・コロナ社) ▽土木学会編『土木工学ハンドブック 下巻』(1974・技報堂出版) ▽吉川和広著『地域計画の手順と手法』(1978・森北出版) ▽同著『土木プラニングのすすめ』(1985・技報堂出版) ▽建設省編『昭和61年版建設白書』(大蔵省印刷局) ▽佐々木恒一著『道路の経済効果と投資基準』(1965・技術書院) ▽高橋清著『道路の経済学』(1967・東洋経済新報社) ▽中西健一・廣岡治哉編著『三版 日本の交通問題』(1980・ミネルヴァ書房) ▽建設省道路局監修『道路行政』各年版(全国道路利用者会議)
日本大百科 ページ 45335 での【道路】単語。