複数辞典一括検索+

ガラス工業🔗🔉

ガラス工業 (がらすこうぎょう) 窯業の一部門で、板ガラス、瓶・管球などのガラス製品、ガラス繊維の3分野からなる。板ガラスは、普通板、フロート板、合わせ板、強化板、複層板などの種類がある。板ガラスの用途は、建築、自動車、その他産業用の三つがおもなものである。建築用にはフロート板が用いられ、板ガラス全体の6割近くを占めている。自動車用には合わせ板、強化板が使われる。合わせ板というのは、二枚のガラスの間にプラスチック膜を挟んだもので、割れても飛散せず、また強化板は焼入れで強度がフロートの3〜5倍あり、これらの板ガラスは安全ガラスともいわれる。複層板というのは、二枚のガラスの間に空気を挟み、断熱効果を高めたものである。  わが国の板ガラス工業は、旭硝子{あさひガラス}、日本板硝子、セントラル硝子の三社によって国内市場が占められる寡占体制が確立されている。このような寡占状態は欧米でも共通しており、アメリカはコーニング社など五社、イギリス一社、旧西ドイツ三社などとなっている。これは、板ガラスの製造が、設備・装置に莫大{ばくだい}な資金を要すること、熟練の蓄積を前提としており新規参入を困難にしていること、販売ルートとの緊密な結び付きを必要としていること、などの理由によるものである。わが国では、自動車用合わせ板・強化板などを除き、板ガラスの大部分は、板ガラス・メーカーと特約した卸商に販売され、卸商はさらに小売商、建築業者などの大口需要家に販売している。特約卸商は全国九地域で協同組合をもち、全国的な連合会を形成しており、また、小売商も府県単位での協同組合とその全国連合組織をもっている。このような販売ルートと板ガラス製造会社との結び付きは強固であり、寡占状態を維持している大きな理由ともなっている。  ガラス製品分野では、その製品は多種多様で、瓶、食器、理化学用ガラス、魔法瓶、ガラス管、光学ガラス、工芸ガラス、電球バルブ、ブラウン管などがおもなものである。ビール瓶などの瓶類やブラウン管などは、自動化された機械によって大量に大工業的に製造されるが、ほかのガラス製品は、猫壺{ねこつぼ}のような小規模な生産設備を備えた町工場でつくられている。このような中小企業の生産性は板ガラスや自動製瓶の大工業に比べて著しく低く、また高熱作業など労働環境も劣悪な状態にある。  わが国のガラス工業は、明治初期、生活様式の変化とともに著しく増したガラス需要に対応するため品川におこされた官営興業社に始まる。のちに改称して品川硝子製作所(この工場建物は現在明治村に保存されている)となった同社は、板ガラスの製造を試みたが失敗した。  1906年(明治39)には、ヨーロッパの資金と技術を導入した東洋硝子製造株式会社が設立され、わが国で初めて純西洋式硝子工場が出現し、機械的製瓶も行われたが、成功しなかった。  最初の板ガラスは品川硝子の伝習生であった島田孫一によって1904年市場に出された。板ガラスの本格的生産は、07年に岩崎一族の経営による旭硝子株式会社の設立に始まる。ここでの板ガラス生産の成功は、東洋硝子の外人技師、職工に多くを負っている。当時の板ガラス製造技術は円筒法(棒状の鉄パイプによって円筒を吹き、これを縦に切って炉内で加熱軟化して展延する)であり、旭硝子は当初ベルギーから人口吹法によるものを導入して操業を行ったが、13年(大正2)にはアメリカからラバース式機械的ガラス円筒吹揚機を導入し、生産は本格化した。旭硝子は第一次世界大戦後の反動不況のなかでも積極経営を続け、昭和年代に入って円筒法にかわる板引法のフルコール法などの新技術の採用などにより、33〜34年(昭和8〜9)には日本の板ガラス生産はベルギー、アメリカに次いで世界第三位を占めるに至った。しかし、第二次大戦中は戦時動員によって生産は停滞し、終戦時には生産設備のほとんどを失っていた。戦後復興のなかで建築用板ガラスの需要増とともに生産も増加し、51年(昭和26)には戦前最高水準を上回った。55年以降の高度経済成長期には、ビル建築が相次ぎ、さらには自動車工業の発展とともに安全ガラスの需要が急成長し、板ガラス工業はこれと歩調をあわせて発展した。技術的には、従来からの板引法であるコルバーン法、フルコール法、それにローラー式のフォード法に加えて、新たにイギリスからフロート法が導入された。これは、火造りのままで磨き板ガラスのように滑らかな板ガラスを製造でき、革命的技術といわれたものである。わが国ではフロート法による生産は65年に日本板硝子で、翌年旭硝子で開始された。  オイル・ショック(1973)以降の不況、新建築の低迷とともに板ガラス生産も減退を余儀なくされたが、最近は、自動車向け安全ガラス、テレビ用ブラウン管などのガラス製品が市場として広がっている。オフィスオートメーション、ファクトリーオートメーションなど情報化の波とともにそれらのためのディスプレー装置のブラウン管需要が急増しており、最近の特徴を端的に表すものである。将来的には、超薄板ガラスの技術を生かした太陽電池や液晶などの分野が有望視されている。板ガラスやガラス製品においては、近年、韓国や台湾などからの追い上げがあり、技術開発による新分野の開拓が急務の課題となっている。 <馬場政孝>

日本大百科 ページ 13541 でのガラス工業単語。