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宗教心理学     【シュウキョウシンリガク】🔗🔉

宗教心理学     【シュウキョウシンリガク】 psychology of religion  宗教に関わる個人的体験・信念・行動や,組織・制度としての宗教を,心理学的側面から実証的に研究する学問分野。宗教の問題は,ヴントジェームズを始めとして,心理学の歴史の初期には研究者が関心を寄せてきた。行動主義全盛の頃には一時衰退したが,1960年前後から実証的研究が盛んになり専門誌も相次いで発刊された。アメリカ心理学会(APA)でも一つの部会を構成している。具体的な研究対象としては,宗教の機能,幼児における宗教的信念の発達,青年期における宗教的社会化,宗教的信念と死,主観的宗教体験,回心,宗教組織の社会心理学的側面,宗教と道徳,宗教的信念とストレス対処,宗教と精神障害,「癒し」としての宗教などがある(Hood, R. M., Jr. et al.1996)。 →信念 →回心/改宗 →カルト →vid.文献 ◆安藤清志

集合行動     【シュウゴウコウドウ】🔗🔉

集合行動     【シュウゴウコウドウ】 collective behavior  広い範囲にわたる多数の人々による未組織で流動的な社会行動のこと。人々の相互作用によって自然発生し,しだいに拡大発展する。既存の制度的規範から逸脱した予測困難な不定形な動きをみせることが多い。群集心理パニック,クレーズ(熱狂),モッブ(暴衆),流言流行,社会運動,世論など多様な集合現象を包摂する概念として使用される。集合行動の特徴は,参加者は自己の興味や要求に従って思い思いに行動しているだけで,共有の目標や永続的な集団意識はなく,相互作用がその場限りで,役割や地位の分化もみられないことにある。またブルーマー(Blumer, H. G.1957)によって,集合行動の参加者はある種の超越的な力に支配されているという感覚をもちやすく,コミュニケーションの形態もワンウェイのマス・コミュニケーションになりがちで,その働きかけは説得や討論のような論理的で直接的なものよりも,刺激,煽動,注意の獲得,アパシーの克服のような情緒的方略が多くなるという特徴が指摘されている。  いかにして集合行動は発生するのかについては,心理的要因と社会的要因の両面から検討されている。心理的要因としては,(1)群集のなかでは他者の観念や情緒が急速に伝染すると考えるル・ボンによる感染説,(2)もともと類似した観念や行動様式,情緒をもつ人々が何らかの契機で集合するとする合流(収斂)説,(3)集団と同様のメカニズムが作用して,急速に規範が形成されていくと考えるターナーら(Turner, R. H. & Killian, L. M.1987)による創発規範説の三つの仮説が提示されている。社会的要因に関しては,スメルサー(Smelser, N. J.1962)が体系的に類型化している。それは,(1)構造的誘発性:社会が潜在的にもっている集合行動を誘発する構造,(2)構造的緊張:経済的価値剥奪の脅威のように不安や不満を喚起する社会的要素間の緊張,(3)一般化された信念の成長と普及:緊張によって引き起こされた状況への反応を規定する信念の一般化,(4)きっかけ:一般化された信念に具体的な実体を与える契機,(5)参加者の動員:人々を行動に駆り立てる行為,(6)社会的統制の作動:集合行動を阻止・抑制する社会統制,の6要因であり,スメルサーはこうした要因の組合せによって,生起する集合行動の形態が規定されると論じている。  集合行動は多様な形態をとって現れるが,その分類に関しては,ブルーマーが「原初的形態の集合行動」と「組織化された形態の社会運動」とに大別し,前者を群集大衆,公衆の3類型に,後者の社会運動を一般的,特殊的,表出的の3類型に分類している。また,スメルサーは,人々が集合行動に動員される際の信念の質的相違によって,(1)恐怖や不安に駆られた人々がヒステリックに逃走するパニック,(2)強い願望充足的信念に基づくクレーズ(craze),(3)不安や危機的状況の責任主体と認知された人々や機関への攻撃行動の敵意噴出行動,(4)不安や危機を解決するために規範を復興あるいは変革しようとする規範志向運動,(5)社会秩序の基本原理である価値そのものを変革しようとする価値志向運動の5類型の分類を示している。  集合行動の機能に関して,集合行動研究の始祖であるパーク(Park, R. E.)は,既存の古い秩序の動揺がもたらす社会不安や危機感に対して原初的な集合行動が発生し,それらが組織化されてゆくことによって新しい秩序が形成されるとして,集合行動は旧秩序から新秩序へと社会変動を促すエージェントであると指摘している。また,ターナーは,集合行動には,決定の正当化,連帯の補強,関心・行為の活性化,社会化の促進といった社会の安定と均衡をもたらす機能があることを指摘している。集合行動は,社会不安や危機感に基づいて既存の秩序や規範を逸脱した未組織的な行動として現れるが,それがしだいに組織化されるにつれ新しい価値の創出が志向されるようになることから,新しい社会秩序や制度の生成起点となるものとして位置づけることができる。 →群集 →群集心理 →パニック →暴衆 →マス・コミュニケーション →流言 →流行 →大衆《Allport, G. W. & Postman, L.1947;Brown, R. W.1954;Le Bon, G.1895;池内一1977→vid.文献 ◆山口裕幸

心理学辞典 ページ 982