ホルモン 【ホルモン】🔗⭐🔉振
ホルモン 【ホルモン】
hormone
生物の体内において導管をもたず,直接分泌物を血液中に分泌するような腺を形づくる組織細胞,または個々の分散した細胞によって微量に産生される特殊な生理活性物質。通常は血液によって運ばれ,他の標的細胞または諸臓器に対してその機能レベルを促進あるいは抑制する効果をもつ。ホルモンは別名,
内分泌とよばれ,消化液のような外分泌とは区別されている。ホルモンの重要な働きは,外界の変化に対して個体の内部環境を一定に保ち,機能を正常に働かせ,生命の維持を図るという生理的適応の調節系を果たしていることである。ホルモンはきわめて微量でも効果を現し,代謝の基質となるのではなく調節物質として働いている。高等動物のホルモンはペプチドホルモン,ステロイド,アミン類の3種に分類され,現在までに40種類近くが知られている。ホルモンは水分,電解質,血糖,体温,血圧などの体内恒常性の維持(
ホメオスタシス),成長,性行動,摂食,生体リズムなど生命活動に深く関係している。ホルモンを産生する臓器としては,
視床下部の
神経分泌細胞,
松果体,脳
下垂体,
甲状腺,副甲状腺,副腎,性腺,膵臓,消化管,腎臓などがある。これらの臓器の器質的,機能的障害により,ホルモン欠乏疾患が現れる。また,産生が異常に亢進することによっても機能亢進症が起こる。
→内分泌 →神経分泌 →アドレナリン →インシュリン →ACTH →エストロゲン →ニューロペプチド →ハイドロコーチゾン
◆池上司郎







梵天の塔 【ボンテンノトウ】🔗⭐🔉振
梵天の塔 【ボンテンノトウ】
→ハノイの塔
本能 【ホンノウ】🔗⭐🔉振
本能 【ホンノウ】
instinct
一般に
行動や
動機づけの生得性のことであり,古くから心理学や生物学の一大テーマであるが,その解釈には議論が多い。心理学において最初に本能を主要な概念として用いたのは
S. フロイトである。彼は本能を行動の内発的な動機づけと捉え,異なる二つの本能(はじめは自我本能と性的本能,後に性愛本能と破壊本能)を対置させて行動を理解しようとしたが,特定の行動との対応は重視しなかった。また
マクドゥーガルは,すべての行動に目的性(horme)を考え,その遺伝的・生得的な動機づけが本能であるとして,逃走・拒否・好奇・闘争・卑下・自己誇示・哺育・生殖・飢餓・群居・獲得・構成の各本能を列挙した。
一方,動物行動に本能を適用することは,
ダーウィンにその源流を求めることができるが,それを重要な概念として理論化しようとしたのは
エソロジーであった。
ローレンツ(Lorenz, K.1965a)は,本能行動とは内的な興奮過程に依存する
中枢神経系の自動的な機能であり,外的刺激にその定位を依存する
走性とあわせて
生得的行動とした。本能行動が内的な興奮過程に依存するということは,その活動固有のエネルギーが自発的に産生・蓄積されるということを意味し,そのエネルギーはふつう鍵刺激によって行動が解発されることで放出されるが,外的対象が欠如した時には真空反応によってそのエネルギーが解消されるとした。また
ティンベルヘン(Tinbergen, N.1951)は本能を,内的・外的起源をもつ何らかの導火的・解発的・定位的な
インパルスに感受性をもち,かつその個体と種の維持に役立つ協応的運動によってそのインパルスに反応するような,階層的に編成された神経機構であるとした(図)。
図表
彼らの理論化には,クレイグ(Craig, W.)による欲求行動(可変的・探索的な行動)と
完了行動(遺伝的に固定された行動)の指摘が大きな影響を与えた。完了行動は,エソロジーでいう固有運動型(fixed action pattern)に当たるものといえる。なお,
反射という定型的行動は,自発性や主観性を欠くという点や行動型が単純である点などにおいて本能行動とは大きく異なるといわれている。
ところで,生得性とは行動が
学習によらず発現することをさしていうものであるが,実際に行動が非学習性であることを証明することは容易ではない。行動の個体発生を規定する要因は
遺伝子情報と経験であり,行動研究にとってその発達をつかさどるメカニズムの解明はきわめて重要な問題である。たとえば鳥の
さえずりの学習や
刻印づけが遺伝子情報と環境の両作用で成り立つという知見が示す通り,本能と学習という行動における単純な二分法は正しくない。特定の社会的刺激を剥奪して動物を育てる隔離飼育という手続が非学習性を証明するのに有効とされるが,そこにおいても,胎内経験や生後の自己身体・重力・明るさなどといった刺激による経験の要素は排除されておらず,何を剥奪した結果行動にどのような影響がみられたのかに対する解釈には慎重でなければならない。ハインド(Hinde, R. A.1970)はそのような考えに基づき,生得性/獲得性という二分法を避けて環境に対し安定的か可変的かによるべきだと主張した。一方ローレンツは,本能行動と学習行動はまとまりをもってはいるが本来別々のものであるという「本能・学習からみあい説」を唱えた。
このように本能は,行動の内因性,目的性,環境とのかかわりの吟味など,行動やその発達における基本的な問題に関わっており,行動研究にとってきわめて重要な概念であるということができる。
→完了行動 →エソロジー →さえずりの学習 →衝動 →生得説 →生得的行動 →走性 →本能のリスト《Alcock, J.1993》
→vid.文献
◆根ヶ山光一



















心理学辞典 ページ 2052。