集団 【シュウダン】🔗⭐🔉振
集団 【シュウダン】
group
日常的には人間ないし動物のたんなる集合や群をも含めて集団とよぶことがあるが,心理学的には,二人以上の人々によって形成される集合体で,(1)その人々の間で持続的に相互作用が行われ,(2)規範の形成がみられ,(3)成員に共通の目標とその目標達成のための協力関係が存在し,(4)地位や
役割の分化とともに全体が統合されており,(5)外部との境界が意識され,(6)われわれ感情や集団への愛着が存在する,といった諸特性を有する時に集団と見なされる。これらすべての特性を完全に備えている必要はなく,それぞれの特性を保有する程度には集団によって差がみられる。
集団には多様な分類基準とそれに基づく類型がある。心理学では,(1)規模によって,対面的相互作用が可能な程度の規模の小集団とそれが不可能な大規模集団とに分類,(2)成員間の関係性によって,客観的組織の存在に成立基盤がある
公式集団と成員間の心理的結びつきに成立基盤がある非公式集団とに分類,(3)成員の
自己カテゴリー化によって,成員が自己の所属する集団であり「ウチ」であると認知する
内集団と所属しておらず「ヨソ」であると認知する外集団とに分類(サムナー Sumner, W. G.),(4)成員の準拠性によって,実際に所属している成員性集団と所属のいかんによらず成員が自己の
態度や
判断の拠り所とする
準拠集団とそうではない非準拠集団とに分類,等がよく用いられる。この他にも古典的ではあるが,成員間に直接的対面的な接触のある
一次的集団と間接的な接触しかない二次的集団との分類(
クーリー)や,成員同士の結びつきが情緒的融和に基づくゲマインシャフトと打算に基づくゲゼルシャフトとの分類(テンニース T
nnies, F.)もしばしば用いられるものとしてあげられる。
人間が集団を形成するのは,(1)個人では不可能な課題遂行を可能にしてより豊かな報酬を得ることができる,(2)協同・分業によってより効率的に課題を処理できる,(3)個人でいることの不安を低減し親和欲求を充足できる,さらには(4)社会的比較を行って社会的リアリティを得ることができるといった理由による。集団形成を促進する要因としては,個人間の位置関係のよさや物理的距離の近さとそれによる相互作用活動の活発化,および態度や
パーソナリティ,民族性などの個人特性の類似性の認知に基づく
対人魅力の高まり等があげられる。
集団が発達するにしたがって,
凝集性が高まり規範に同調するように斉一性圧力が強まるといった現象がみられるのに加えて,好き嫌いの対人感情に基づく
ソシオメトリー構造,相互作用のあり方を表すコミュニケーション構造,対人的影響力の強弱に基づくパワー構造,さらには地位役割構造等が成立して構造の分化が進む。個人がパーソナリティを形成するのと同様に,構造の分化は集団に独特の個性と行動様式を生み出していく。もっとも,集団を人間と同様の心性をもつ存在として捉える視点に関しては過去に活発な論争が行われている。20世紀初頭までは,
デュルケムの「集合表象」,
ヴントの「民族心」,
マクドゥーガルの「
集団心」等に代表されるように,集団に独特の心性の存在を認める立場が優勢であった。これに対して
F. H. オルポートは,
国民性や民族性などの集団特性は個人の意識のなかに存在するのであって,個人の心理に還元できるとする立場から,集団心を認めることは,
集団錯誤であると批判した。その後,
レヴィンが集団を成員間の相互依存性の力動的全体と捉えて創始した
グループ・ダイナミックスをはじめとする多くの研究知見の蓄積によって,集団は社風や校風と表現されるような独自の個性や行動様式をもつ存在として見なされるようになっている。
キャッテル(Cattell, R. B.1948)は,集団内部の相互作用によって個人を超えて集団がもつようになる行動様式や個性をシンタリティ(syntality)とよんでいる。
→集団機能 →集団規範 →集団心 →集団錯誤 →集団発達 →集団圧力 →集合行動 →組織 →グループ・ダイナミックス《Berkowitz, L.1978;Cartwright, D. & Zander, A.1960;Davis, J. H.1969;McGrath, J. E.1984;三隅二不二1987;佐々木薫・永田良昭1987;Shaw, M. E.1976;末永俊郎1978;Tajfel, H.1981》
→vid.文献
◆山口裕幸
























心理学辞典 ページ 991 での【集団 】単語。