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尺度構成法     【シャクドコウセイホウ】🔗🔉

尺度構成法     【シャクドコウセイホウ】 scaling method  心理学では,本来の研究上の関心となる変数を直接的に測定できない現象が多く,実験調査で収集された原データから,事象のモノサシ(尺度 scale)を作り(尺度構成 scaling ; scale construction),尺度を使って事象を測定した結果を,理論やモデルの構築に用いる。したがって尺度構成法は,心理学的測定の理論と密接な関係にあり,計量心理学で重要な位置を占める。  原データは,何らかの水準の尺度(基本的には名義尺度順序尺度間隔尺度比尺度)で観測される。刺激の集合 O={O} を,ある尺度(X)のうえで観測したデータを,{x} と記す。尺度構成法とは,研究目的に応じた操作により,{x} を別の尺度(Y)のうえの集合 {y} に変換する手法である。尺度構成は,通常 X に比べて Y の尺度水準が高い場合をいうが,広義には X と Y の尺度水準が同じ場合も含まれる。X と Y がともに名義尺度のとき,分類や置換に該当する(表のケースa)。X=名義または順序尺度,Y=順序尺度のとき,順序尺度の構成といい,{y} は順序集合である(ケースb)。実用的に最も重要な尺度構成は,X=名義または順序尺度,Y=間隔または比尺度のときで,{y} は実数(数値)の集合である(ケース c, c)。ここで Y=間隔尺度として構成する手法が,データ解析で有用であり,多種多様な手法がある。ケース c と c は,質的データを数値データに変換するという意味で,数量化とよぶことがある。また特に日本では,「数量化」とは,ケース c すなわちカテゴリカル・データの数量化に限定することがあるので注意を要する。X と Y がともに,間隔または比尺度であれば(ケースd),尺度構成とは原点と単位の変更であり,座標変換またはスケーリングということが多い。 図表  尺度構成法の歴史を簡単に述べる。19世紀にフェヒナーの心理物理学(精神物理学)の成立以後,物理量で表した刺激とその心理量との対応関係の研究のために,一次元的な心理尺度を構成する手法(心理物理学的尺度構成法)が発達し,知覚感覚の研究に応用された。20世紀に至りサーストンは,心理学的連続体の概念と確率過程を導入し,必ずしも物理量で表されない刺激に対しても適用可能な尺度構成法を提案し,社会心理学的側面(態度嗜好の測定)に応用分野を拡大し,計量心理学の発展を促進した。1950 年代にトーガソン(Torgerson, W. S.1958)は,多次元尺度を構成する手法を提案した。これは,一次元の心理的判断よりも複雑な判断,すなわち潜在的に多次元と想定されるような心理的事象に対して,尺度構成の適用分野を拡大するとともに,それ以後の多次元尺度構成法の多様な方法的発展の契機となった。今日ではきわめて多種多様な尺度構成法が存在する。それらは尺度水準,データの観測集合の定義,確率変数の有無の観点から大別される。 →多次元尺度構成法 →計量的多次元尺度構成法 →非計量多次元尺度構成法 →サーストン法 →ガットマン法 →測定 →数量化理論 →精神測定法《Krantz, D. H. et al.1971;Luce, R. D. et al.1990;Stouffer, S. A.1950;Suppes, P. & Zinnes, J. L.1963;Suppes, P. et al.1989;齋藤堯幸1980;高根芳雄1980→vid.文献 ◆齋藤堯幸

心理学辞典 ページ 971 での尺度構成法     単語。