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社会規範     【シャカイキハン】🔗🔉

社会規範     【シャカイキハン】 social norm  社会や集団において個人が同調することを期待されている行動や判断の基準,準拠枠(frame of reference)。これには行動の望ましさも含まれており,必ずしも社会や集団における平均的行動であるとは限らない。規範の影響力の程度に応じて斉一化への圧力が生じる。また規範の形態は公的なものから私的なもの,外顕的なものから内隠的なものまで広範にわたっており,規範の個人に対する強制力はそれに反する行動への制裁との関係で変化する。一般に,社会規範が成員に定着,個人の行動原理として内在化されて規範の存在が意識されなくなったとき,外的制裁の必要はなくなる。  (1)慣習(custom):生活上の必要に基づき反復される行動が自然に定着し,長期にわたって持続し成員が遵守している行動様式である。このなかで,役に立つとか便利であるということで自然発生的に固定した行動様式「習俗」(folkways)は,真実であるという信念が含まれており,規範とは意識されず制裁もおだやかである。伝統的に形成され維持されているが,時代に合わない旧習や迷信偏見が固定したものを「因習」という。正しく真実であるという概念が強くなった行動様式「習律」(mores)は,成員にも遵守することが強く要求されて違反に対する制裁も明確なものとなる。(2)道徳(moral):善―悪の判断基準という倫理的意味をもった規範体系であり,ドグマ化されているものが多い。遵守に対しては高い人格評価,賞賛があり,違反に対しては非難や軽蔑などの制裁がある。道徳のなかでも,集団成員に共有されかつ個人のうちに内在化されているものはエートス(Ethos)とよばれる。個人を内側から規定するものであり,違反に対する制裁もゆるやかである(Weber, M.1905)。(3)法(law):公的権力によって規定され,全成員に対して普遍的に適用される顕現的な規範である。その強制力は特定の行為に対して限定的に行使される。一方で,個人の権利の保護,調整の機能をもつ権利規範でもある。  以上のように,規範は共通の価値,行動様式への同調を促す社会統制の有力な手段となる。望ましい行動に対する賞賛,望ましくない行動に対する非難,処罰によって逸脱行動を防ぎ緊張解消の役割をもつ。さらに,規範の存在によって既存の制度的規範に対立する非規範的少数派の規範を生み出す土壌をもつものであり,社会に緊張,紛争,変動を生み出す機能ももっている。  社会心理学の領域では,シェリフ(Sherif, M.1936),それを受け継いだニューカム(Newcomb, T. M.1950)以降,実験的手法を用いた同調行動をも含めた集団規範の研究に重点が置かれるようになった。 →準拠集団 →集団規範 →集団圧力 →Jカーブ仮説 →リターン・ポテンシャル・モデル →同調 →vid.文献 ◆小関八重子

心理学辞典 ページ 935 での社会規範     単語。