実験現象学 【ジッケンゲンショウガク】🔗⭐🔉振
実験現象学 【ジッケンゲンショウガク】
experimental phenomenology
現象学は哲学者
フッサールが
カントとヘーゲル(Hegel, G. W. F.)の影響を受けて直接経験の研究へ応用したものであるが,現象学的方法の
心理学への導入は20世紀の初めと見なされ,それはベルリン大学の
シュトゥンプに負うところが大きい。しかし,
視覚研究の歴史をたどると,ゲーテ(Goethe, J. W.1810)の
色に関する多くの観察,プルキンエ(Purkinje, J. E.)の,
不適刺激による
光覚現象,
プルキンエ現象,
残像,
暗順応,
盲点等の観察,
ヘリングの
明るさや色に関する研究等,すでに19世紀に,ゲーテを除いてはおもに生理学者によるすぐれた現象学的研究がなされていた。特にヘリングは供覧実験によって,論点を立証する決定的実験(experimentum crucis)を行った。これらの研究の後に20世紀初頭になって,
イェンシュによる
視力や
奥行き知覚の研究,
カッツ(Katz, D.1911)の
色の現れ方の研究等が現れた。
心理学における実験現象学の立場を明確に示したのは
ウェルトハイマー(Wertheimer, M.1912)である。彼が運動視について,知覚野における力動的事象として現象学的に記述することを企図したのが
ゲシュタルト心理学の始まりとされている。彼は,たとえば
体制化のようなゲシュタルト心理学の論点を立証する図形を呈示し,それを「ありのままに見る」ことを人に求める。すなわちこれが「決定的実験」というべきもので,それは実験現象学の「特技」であり,ゲシュタルト心理学を特徴づけるものでもある。ウェルトハイマーの
仮現運動の研究と同時期に始められた
ルビン(Rubin, E.1921)の
図と地分化の研究も実験現象学の代表的成果である。ウェルトハイマーは実験現象学に心理学の一般的方向づけを見出したのに対し,シュトゥンプ,イェンシュ,カッツ,ルビンは特定のテーマの範囲内で実験現象学的研究を行っていたといえよう。
→色の現れ方 →仮現運動 →ゲシュタルト心理学 →図と地 →現象学的心理学
→vid.文献
◆上村保子


























心理学辞典 ページ 892 での【実験現象学 】単語。