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自己実現     【ジコジツゲン】🔗🔉

自己実現     【ジコジツゲン】 self-actualization ; self-realization  個人のなかに存在するあらゆる可能性を自律的に実現し,本来の自分自身に向かうことをさす。この言葉は最初にユングによって用いられたが,彼は自己実現よりもむしろこれと同義の個性化という用語を用いることが多い。ユングは個性化を,我々が自己自身になることであると定義し,生命はすべて個性化へ向かう本能をもつという。また自己実現の過程においては,無意識からのメッセージを受け取ることが重要であるとする。彼はこの過程の光に満ちた部分だけでなく,これまでの均衡を失うという危機的側面も指摘した(河合隼雄1967)。  ホーナイ(Horney, K.1950)は,各個人に独自な成長の源を「真の自己」(real self)とよび,真の自己の成長過程を自己実現とよんだ。そして自己実現を援助するものとして,他者との間に起こる健全な摩擦と,自分として生きることに安心感を与えてくれる他者の善意とを重視した。  マズロー(Maslow, A. H.1971)の自己実現は,自らの内にある可能性を実現して自分の使命を達成し,人格内の一致・統合をめざすことをさす。健康な人間は,成長欲求により自己実現に向かうように動機づけられている。この成長欲求は欠乏欲求が満たされてはじめて現れる。欠乏欲求とは,生命維持のための生理的欲求や安全,所属,愛情などの社会的欲求で,一般に他者によって実現されるものである。すなわち自己実現過程は,生理的欲求や社会的欲求の満足なしには生起しないのである。彼は自己実現している人の特徴として,行動思考に際して自己内の自律的論理基準に従う,自他に内在する特質をそのまま受け入れ他者に寛大である,などをあげている。  ロジャーズ(Rogers, C. R.1961)の自己実現は,自己を受容して防衛性から解放され,より大きな自律性や統合性に向けて心理的に成熟していくことを意味する。彼の理論は,自己実現を有機体の基本的な動因と考えている。その生起に生理的・社会的欲求の満足を介在させない点で,マズローのヒエラルヒー・モデルとは異なる。 →個性化 →欲求階層説 →vid.文献 ◆越川房子

心理学辞典 ページ 851 での自己実現     単語。