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自己     【ジコ】🔗🔉

自己     【ジコ】 self  一般的には,意識の主体を自我とよび,意識の対象としての自我を自己とよぶが,自己の概念は個々の理論体系でかなり異なっている。ユング(Jung, C. G.1921)は,意識と無意識の両面を含む心の中心を自己とよび,その意識的側面を自我とよんだ。そして自我はすべての中心である自己と関わりをもつことによって,成長していくことができると考えた。ホーナイ(Horney, K.1950)は,すべての人間に備わる,各個人独自の成長と完成をめざす根源的な力を真の自己(real self)とよんだ。そして治療とは真の自己の発展を援助することであると考えた。サリヴァン(Sullivan, H. S.1953)は,自己を生成発展を繰り返すダイナミックな構造体「自己組織」(self-system)として捉えた。この自己組織は発達の過程で取り入れられた他者からの評価の総体であるとされ,前二者と異なり自己の生成の基底に他者の存在をおいている。  コフート(Kohut, H.1977)にとっての自己は,個人のあらゆる体験を組織するものである。自己は,(1)目標と野心の極,(2)理想と規範の極,(3)この両極間の緊張に折り合いをつける現実の才能と技量,という三つの要素からなる。また,「目標や野心」と「理想や規範」を両極とし,その中間に「才能と技量」という両極の調整機能を位置づけていることから,彼の自己は特に双極的自己ともよばれる。彼は,自己の三つの要素が適切な均衡点を見出すことで一つの全体として機能し,自己が現実化すると考えている。  ロジャーズ(Rogers, C. R.1959)の自己は,存在していること,機能していることの意識であり,現象学的な自己である。有機体が自ら経験した価値と,他者との相互作用を通して得られた価値などから形成される。これは自分の特性が,その特性のもつ諸価値を伴って概念化されているものであり,流動的ではあるが一貫した構造をもつものである。彼の自己理論は,この自己と現実経験との一致に関わる問題を軸として展開されている。 →自我 →社会的自己 →自己意識 →自己概念 →自己実現《Hattie, J.1992→vid.文献 ◆越川房子

心理学辞典 ページ 831 での自己     単語。