色覚異常 【シキカクイジョウ】🔗⭐🔉振
色覚異常 【シキカクイジョウ】
anomalous color vision ; color vision defect ; defective color vision ; color vision deficiency
色知覚の異常のことをいう。遺伝的要因による先天性色覚異常と種々の疾患等の原因による後天性色覚異常に大別できるが,
実験心理学の領域で扱うのはおもに前者である。また,一般的には,後天性色覚異常も,先天性色覚異常の枠組で分類される。そこで,本項では,先天性色覚異常について述べる(色覚の分類の表を参照)。
正常色覚においては,任意の色を
混色によって作り出すためには,独立な三つの色が必要となるので,それを正常三色型色覚(normal trichromatism)という。この
三色型色覚には,任意の色と等色させるために独立な三つの色が必要であるが,その混合率が正常色覚者の場合と異なる異常三色型(anomalous trichromatism, いわゆる色弱)もある。また,任意の色を二つの色の混色あるいは一つの色だけで等色させることができる色覚異常も存在し,前者を
二色型色覚(いわゆる
色盲),後者を
一色型色覚という。二色型色覚は,正常者では3種類存在する
錐体の感光色素が,
遺伝子の要因によって2種類しか存在しないために起こる色覚異常であると考えられる。3種類の錐体は,その
感度のピークのある波長の領域によって,L錐体(long-wavelength sensitive cone, 長波長に感度のピークがある),M錐体(middle-wavelength sensitive cone, 中波長に感度のピークがある),S錐体(short-wavelength sensitive cone, 短波長に感度のピークがある)とよばれる。表に示す通り,異常三色型と二色型色覚とは,異常を示す錐体の種類によって分類され,L錐体,M錐体,S錐体の異常をそれぞれ,第一異常,第二異常,第三異常という。また,一色型色覚は,錐体が1種類だけしか存在しない錐体一色型と,錐体系の機能が欠落した桿体一色型に分かれる。
三色型色覚
正常三色型
異常三色型
第一異常 protanomaly
第二異常 deuteranomaly
第三異常 tritanomaly
二色型色覚
第一異常 protanopia
第二異常 deuteranopia
第三異常 tritanopia
一色型色覚
錐体一色型 cone monochromatism
桿体一色型 rod monochromatism
近年,色覚異常の機構が,遺伝子レベルで明らかになりつつあり,3種の錐体の感光色素の遺伝子の位置も判明した。それによると,S錐体色素の遺伝子は第七染色体上にあるが,L錐体とM錐体の色素の遺伝子はそれぞれX染色体(性染色体)上のきわめて近い位置にあることが明らかになった。したがって,第一,第二異常が伴性の劣性遺伝をする比較的頻度の高い色覚異常であるのに対して,第三異常は特異な遺伝形態をとるきわめてまれな色覚異常であることも,遺伝子レベルで解明が進みつつある。
→色 →混色 →三色型色覚 →二色型色覚 →一色型色覚 →錐体 →桿体《田崎京二ほか1979;Wyszecki, G. & Stiles, W. S.1982;大山正ほか1994;Kaiser, P. K. & Boynton, R. M.1996》
→vid.文献
◆日比野治雄










心理学辞典 ページ 816 での【色覚異常 】単語。