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時間知覚     【ジカンチカク】🔗🔉

時間知覚     【ジカンチカク】 time perception  物理的時間の経過に対する知覚作用を一般に時間知覚といい,知覚された時間は物理的時間に対して心理的時間(psychological time)とよばれる。しかしこのことは,いかなる外界の事情とも関連せず均質に流れていく物理的時間がまずあり,それを我々が直接知覚する,ということを意味するわけではない。時間知覚は,事象が連続的に順序をもって生起する,その過程,変化,継起からもたらされるものである。したがって,時間知覚は,特定の受容器への適刺激から始まる視覚聴覚等の知覚とは,その成立のプロセスとメカニズムをかなり異にする。すなわち,視覚,聴覚等々による事象の情報処理の結果として時間知覚は成立すると考えられる。たとえば,フレス(Fraisse, P.1984)は認知される変化の数が,オルンスタイン(Ornstein, R. E.1969)は記憶貯蔵庫内での蓄積容量が,時間知覚の基礎であると考えた。他方,有機体内にかなり規則的な変化あるいは継起を作り出す内的時計(internal clock)のようなものを想定し,そこから時間知覚の基礎となる情報が提供されるとする考えもあり(たとえば,Treisman, M. et al.1994),さらには,時間経過とそれ以外の事象への注意の配分に応じて,両者の時間知覚への寄与の程度を考えるようなモデルもある(たとえば,Thomas, E. A. C. & Weaver, W. B.1975;松田文子1996;Zakay, D. et al.1994)。  持続時間が短い(約2ないし5秒以内)時は,いま現に存在している刺激の持続として,その継起も変化もほとんど同時にひとまとまりに把握される。その意味で,その持続時間は心理的現在といえる。心理的現在を超えた持続に対しては,それを直接的に同一の全体のなかで把握できないので,時間知覚ではなく時間評価とよばれることも多い。  時間知覚の研究課題としては,精度の問題と心理的時間の伸縮をもたらす要因の問題に大別される(大黒静治1961)。精度の問題には,同時性の知覚時間弁別,あるいは心理的時間の尺度化の問題も含まれる。エイスラー(Eisler, H.(1976))は,これまでの多くの研究結果を調べなおし,1秒以下から数百秒におよぶ範囲において,心理的時間は物理的時間に対して,平均およそ0.9の指数部をもつベキ関数であることを示した。  心理的時間の伸縮をもたらす要因については,さまざまな観点から研究され,多くの要因があげられているが,松田文子1996はそれらを三つにまとめている。  [1] 神経生理学的な興奮の程度:たとえば,体温の高い状態や興奮剤を服用している時のように,神経生理学的に興奮していると,一般に心理的時間は長くなる。逆に体温を下げたり,麻酔薬のもとにある時,あるいは酸素の少ない高所にいる時は,心理的時間は短い。また昼夜の代謝速度と心理的時間の関係,躁うつ病者の躁うつと心理的時間の関係が,これと一致するという研究もある。  [2] 時間経過への意識の集中度:経過する時間そのものに注意を集中し,時間の経過を意識すればするほど,一般に心理的時間は長くなる。たとえば,経過時間中に行う活動が魅力的で,適度に困難で,自我関与が高いものであればあるほど,時間経過を意識することが少なくなるので,心理的時間は短くなる。また,ある時間の経過後に出来事が起こる,あるいは行為を行うことがわかっており,ひたすらそれを待っている場合には,時間経過に注意が集中するので,心理的時間は長くなる。  [3] 経過時間中の刺激の認知:多くの事象が生起するには,長い時間が必要であるという認識の般化として,刺激が,より多い,より強い,より複雑,より大きい等々と認知される時は,一般に心理的時間は長くなる。たとえば,外的な継起的刺激があるとき,その頻度が高いほど,心理的時間は長くなる。ドット刺激であれば,数が多いほど,それが動く場合は速いほど,心理的時間は長くなる。カッパ効果もここに含まれる。この要因の効果は,大人より子どもにおいて強い。 →時間評価 →同時性の知覚 →時間弁別 →心理的現在 →カッパ効果 →情報処理 →注意 →vid.文献 ◆松田文子

心理学辞典 ページ 810 での時間知覚     単語。