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視覚生理学     【シカクセイリガク】🔗🔉

視覚生理学     【シカクセイリガク】 visual physiology  視知覚の機能的特性は,その基盤となっているハードウェア,つまり視覚神経系との対応をとって説明される場合が多い(神経還元主義とよばれる)。この意味で,視覚生理学は視覚心理学の進展につねに大きな影響を及ぼしてきた。 【受容野研究】 1本の感覚神経が情報を伝える感覚受容面上の範囲は受容野とよばれる。ヒューベルウィーゼル(Hubel, D. H. & Wiesel, T. N.1962)は,大脳皮質視覚領野で,ある方位に傾いた細長い刺激(スリット光)に選択的に反応し,オン・オフ領域が分離している受容野をもつ単純細胞や,方位さえあっていれば受容野内のどの場所に与えたスリット光のオン・オフにも応答する複雑細胞,さらに,刺激の長さが片側あるいは両側に限定された時のみ応答をする超複雑細胞を次々と発見した(図1参照)。その後,方位選択性(特定の方位に応答する)ニューロンは皮質の表面から底にいたる方向にカラム状に整然とならんでいることを見出し,この構造をハイパーカラムと名づけた(Hubel, D. H. & Wiesel, T. N.1979)。このような受容野研究の進展により,大脳皮質における視覚情報処理では,単純なものからより複雑なものが構成され,徐々に高度化が進んでゆくという原理が浮き彫りにされた。 図表 【認識細胞仮説】 このような研究成果は,脳の奥へ徐々に研究の手を伸ばしていけば,我々の知覚内容に対応するような脳内情報処理の産物,つまり認識細胞(gnostic cell)を見つけることができるという期待を与えた(Konorski, J.1967)。実際に,高次領野(特に下側頭連合野)では,手や顔の形状に特異的に応答するニューロンが発見された。この考え方を進めると,単一ニューロンの活動が一つの認識に対応すると想定される(おばあさん細胞仮説)。しかし,単一ニューロンによる情報表現の非経済性も指摘され,複数のニューロンによる分散表現や集団符号化,同期的発火という考え方も提出されてきている。 【モジュール・下位系理論】 現在では,視覚神経系をいくつかのモジュールや経路にわけ,それらの神経集団と感覚・知覚内容との対応がとられるようになってきている。たとえば,視覚系では,現在のところ30以上の領野の存在が報告されており,それぞれ色や形,運動や空間位置などの情報について独立した処理が行われていることが知られている(図2)。脳障害の症例からも,それらの領野が損傷を受けると,色覚や運動知覚などが選択的に損なわれることが報告されている。 図表 →受容野 →ハイパーカラム →おばあさん細胞 →大細胞系/小細胞系 →物体視系/空間視系 →背側ストリーム/腹側ストリーム →vid.文献 ◆行場次朗

心理学辞典 ページ 801 での視覚生理学     単語。