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視覚     【シカク】🔗🔉

視覚     【シカク】 visual sensation ; visual perception ; vision  人間のものを見る能力を包括的に示す語。人間は,外界に存在するさまざまな情報(刺激)を感覚を通じて受容する。視覚は,人間に備わっている感覚・知覚のシステムの一つであり,可視光線とよばれる領域の電磁波(約380〜780nm)を刺激として受容する眼球からまでを含む情報処理システムのことをいう。視覚情報処理の基礎となる網膜像を形成するための光学系としての働きをする眼球の諸組織(角膜水晶体など)と,その網膜像の内包する情報を伝達するとともに一連の情報処理を行う神経系(視細胞から脳までを含む)とに大別することができる。 【眼球の働き】 光学系としての眼球の働きで最も重要なのは,さまざまな距離にある外界の対象を網膜上に鮮明な像(網膜像)として形成させることである。この点で,眼球の構造(の項の図参照)は,カメラにたとえられることが多い。しかし,カメラの場合は,レンズを前後に動かしてシャープな像を映し出すようにするのに対して,眼球の場合は,水晶体(英語ではlensである)の厚みを変化させることによって焦点合わせを行うことが大きな相違点である。視力が正常な人の眼球では,遠方を見ている場合に,毛様体筋が弛緩して水晶体が最も薄く(曲率が最も低く)なった状態で網膜像がシャープになるようになっている。したがって,見ようとする対象が近くなるにつれて,毛様体筋を収縮させて水晶体の厚みを増し(曲率を高くし)て焦点合わせを行うのである。このような機能を調節という。 【視覚の経路】 網膜像の情報は,視細胞(錐体桿体)に始まる神経系によって,脳へと伝達される。光刺激は,視細胞で電気的信号へと変換され,双極細胞などを経て,神経節細胞(ganglion cell)によって外側膝状体しつじようたい(LGN)に伝達される。このとき,注意を要するのは,右視野の情報(各眼球の網膜の左半分に投影される)は,左右どちらの眼球においても大脳の左半球へと伝達され,逆に左視野の情報(各眼球の網膜の右半分に投影される)は,左右どちらの眼球においても大脳の右半球へと伝達されるという点である。この情報の分割は,LGNよりも眼球側にある視交叉でなされる。そして,この神経節細胞は,2種に大別できることが明らかになっている。一つは反対色的(波長選択的,すなわち波長によって興奮・抑制の反応が変化する)な細胞で,もう一方は波長非選択的な細胞である。前者は,刺激に対して持続的に反応する(発火を続ける)のでトニック細胞(tonic cell),後者は,刺激の呈示直後および消失直後に一過性の反応をするのでフェージック細胞(phasic cell)とよばれる。さらに近年,神経節細胞から LGN を経て第一次視覚野(V1)に至る経路は,LGN のパーボ系経路(parvocellular)およびマグノ系経路(magnocellular)とよばれる2種類の層を経由する経路に大別できることもしだいにはっきりしてきた。上記のトニック細胞およびフェージック細胞とパーボおよびマグノの関係については,まだ明確な解答は出ていないが,パーボは色情報に関する信号を伝えるが,マグノの信号は色情報にはあまり関与していないらしいといわれている。図は,現在までの研究結果をもとにした視覚の経路の概略であるが,まだまだ不明な点も非常に多い。 図表 →視覚刺激 →感覚 →視覚系 →眼 →網膜像 →角膜 →水晶体 →網膜 →視力 →調節 →錐体 →桿体 →二重作用説 →双極細胞 →外側膝状体 →大細胞系/小細胞系 →視野 →視交叉 →反対色説 →視覚野《Rodieck, R. W.1973;田崎京二ほか1979;大山正ほか1994→vid.文献 ◆日比野治雄

心理学辞典 ページ 797 での視覚     単語。