作動記憶 【サドウキオク】🔗⭐🔉振
作動記憶 【サドウキオク】
working memory
作動記憶(作業記憶)は
短期記憶の概念を発展させたものであるが,短期記憶が情報の貯蔵機能を重視するのに対し,作動記憶は,会話,読書,計算,推理など種々の認知機能の遂行中に情報がいかに操作され変換されるかといった,情報の処理機能を重視する。
バッデリー(Baddeley, A. D.1990)は次の図のような作動記憶のモデルを提出している。
図表
このモデルでは,作動記憶は言語的情報の処理のための音声ループ(phonological loop)と,視覚的・空間的情報の処理のための
視空間スケッチ帳,およびこれら二つの下位システムを制御する中央制御部(central executive)から構成されている。音声ループとは言語的リハーサル・ループであり,たとえば電話帳で調べた番号をプッシュし終わるまで口で唱える場合などに機能する。つまり,音声ループは認知課題の遂行中に言語的情報を保持しておく内なる耳(inner ear)の働きや,言葉を話すために準備している単語を保持しておく内なる声(inner voice)の働きをするものである。これに対し,視空間スケッチ帳は内なる目(inner eye)に相当するもので,野球選手がバッター・ボックスで投手のピッチング・フォームを思い浮かべてタイミングを計ったりする場合などに機能する。音声ループや視空間スケッチ帳の特性や,それらが種々の認知課題の遂行中にどのような機能を果たしているかを調べるために,さまざまな実験的分析もなされている。たとえば,単語を視覚的に呈示し直後に
再生させると(
記憶範囲の測定),再生語数は単語の音節数の関数として減少し(これを
語長効果という),その数は通常2秒間で読み上げることのできる数と一致することが確認されている。このような実験結果から,音声ループは,2秒間で音声化できる量という容量の限界があると考えられている。
→短期記憶/長期記憶 →視空間スケッチ帳 →記憶範囲《Baddeley, A. D.1986;Gregg, V.1986;Cohen, G. et al.1986》
→vid.文献
◆森敏昭







心理学辞典 ページ 771 での【作動記憶 】単語。