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錯覚     【サッカク】🔗🔉

錯覚     【サッカク】 illusion  知覚された対象の性質や関係が,刺激の客観的性質や関係と著しく食い違う場合をいう。錯覚の原因が外部にあるものを物理的錯覚,感覚器にあるものを生理的錯覚ないし感覚的錯覚,中枢にあるものを心理的錯覚と区別する分類法がある。物理的錯覚の例は,夏の強い陽差しの道路に逃げ水を見るとか,耳に押し当てた貝殻に海鳴りを聞くといった場合。これらの原因は屈折や共鳴など物理的事由による。生理的錯覚の代表例は矛盾冷覚。心理的錯覚に分別された事象は,知覚事象だけでなく記憶思考行動などの諸過程を広く含む。また,自然界の生物にみられる擬態(mimicry)・偽装(camouflage)も錯覚とよばれることがある。  このうち現在の心理学では,錯覚を知覚の働きに限定するのが普通である。錯覚は感覚系の違いにより,視覚における錯覚である錯視,触覚的錯覚,運動感覚における錯覚などに分類する。触覚的錯覚の例としてはアリストテレスの錯覚が有名である。運動感覚による錯覚にはシャルパンティエの錯覚(大きさ = 重さの錯覚ともいう)がある。また,縄切れを蛇に,取り込み忘れた洗濯物を幽霊に見まちがえるといった知覚者の不安や要求に依存する錯覚もある。  錯覚を知覚機能に限定すると,知覚の働きは刺激の存在を前提としているから,心理学においては,錯覚は幻覚と厳格に区別されることになっている。しかし,冷静な意識下にあっても,壁のしみが動いている虫に見えるようなことはままある。一方,発熱時,幻覚剤の使用,慢性アルコール中毒でも,このような知覚の変形が現れる。この症状はパレイドリア(pareidolia, 変像)とよばれる。実際に臨床上で,錯覚と幻覚の厳密な区別を行うことは思ったほど易しくない。 →矛盾感覚 →アリストテレスの錯覚 →シャルパンティエの錯覚 →幻覚 →幻覚剤《Cobb, V.1981;Lanners, L.1977→vid.文献 ◆田中平八

心理学辞典 ページ 769 での錯覚     単語。