意思決定 【イシケッテイ】🔗⭐🔉振
意思決定 【イシケッテイ】
decision making
意思決定とは一般にいくつかの可能な行動の選択肢から一つを選ぶことであると定義することができる。この選択肢を代替案とよぶことが多い。意思決定を科学的に研究するアプローチとして,規範的アプローチと記述的アプローチを区別することができる。規範的アプローチでは,人間が意思決定をする際の理想を示す公理系と,その公理系から導かれるルール(意思決定の指針)をその特徴とする。規範的アプローチの代表はベイズ的アプローチである。ベイズ的アプローチでは,不確かさの程度を定量化する主観確率と,ものごとの望ましさを定量化する
効用という二つの概念を用いる。それぞれの代替案の効用は,その代替案の結果起こりうる結果の効用を,それぞれの結果が起こる確率分布によって平均したもの(すなわち積分)によって表される。このような代替案の効用を期待効用(expected utility)という。最適な決定とは,期待効用を最大化する代替案を選択することである。
ところで,ものごとの不確かさがすべて主観確率で表現できないとする強い主張がある。主観確率は,
確率の加法性を満たさなければならず,通常の状況において人間が実際に行う確率評価が満たすことのできる条件とは考えられない。このため,人間の意思決定の規範として,非加法的な
ファジー測度をより適切と認め,代替案の期待効用を,ファジー測度によるファジー積分とする立場もある。
一方,人間の意思決定は,このように公理系を柔軟化したとしても,それ以上に柔軟に状況に対応し,また,ダイナミックに変化する。このことは,
トヴェルスキーやカーネマン(Tversky, A. & Kahneman, D.1981 ; Kahneman, D. et al.1982)によって,まず,人間の心理的決定が,規範的決定理論の指針に従わないことが多くの実験例を通して示された。実際の人間の決定は,規範的モデルが要求する整合性をもたず,数学的規範と直観的判断との間に著しい乖離を生じ,パラドックスとよばれることがある。
意思決定を支援する立場からいえば,意思決定の理想としての規範を追求する規範モデルを必要とする一方で,人間の実際的状況を無視することはできない。すなわち,意思決定を支援するという目的のためには,規範モデルや記述モデルの単純な応用では足りず,独自の理論的体系化や技術が必要とされる。ゆえに,規範的アプローチと記述的アプローチとは区別して,このようなアプローチを処方的アプローチとよぶ場合がある。
→選択理論 →確率 →効用《小橋康章1988;佐伯胖1980;繁桝算男1995》
→vid.文献
◆繁桝算男




心理学辞典 ページ 74 での【意思決定 】単語。