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コミュニケーション     【コミュニケーション】🔗🔉

コミュニケーション     【コミュニケーション】 communication  コミュニケーションとは情報のやりとりである。情報とは広義には物質やエネルギーのパターンであるが,ヒトのコミュニケーションにおける情報は,情報処理の主体であるヒトにとって何らかの意味を帯びた表象であると考えられる。するとコミュニケーションとは,何らかの意味ある表象を伝達する過程であることになる。この伝達の過程では,意味ある表象である情報が,何らかの形,すなわちメッセージとなって運ばれる。またメッセージはメディアを通して運ばれる。さらに,情報がメッセージとなるにはある人(送り手)の表象からそれが記号化(もしくは符号化)されなければならず,また,メッセージを受け取った受け手の側ではそれを自らにとって意味ある表象として再現(記号解読もしくは復号化)されなければならない。  コミュニケーションは,この伝達の過程でいくつかの問題をはらんでいる。第一は,記号化・記号解読が,ともに同じルールに則って行われているかどうかという問題である。ここでルールというのは,や意味の辞書的規則や語用論的なルールにとどまらず,役割や地位による社会的な制約や文化的なコミュニケーションの慣習などまでをも含む。伝統的なコミュニケーション概念では,基本的にはこのルールがコミュニケーションする両者の側で同一であることを仮定してきたが,そう仮定してしまうと,多様化した社会のなかで頻繁に生じるディスコミュニケーションの問題を検討する足かせとなる。むしろ,コミュニケーションする当事者たちは,コミュニケーションの現場でルール共有を実現・確認しながらコミュニケーションしているのだ,逆にいえば,場合によってはルール共有の形成・確認作業がコミュニケーションにとって重要な側面をなすのだ,と考えるべきであろう。  こう考えることによって,誤解,欺瞞,解釈などの問題について理論化・研究が容易になるばかりではなく,さらに意味の共有過程のなかで,コミットメント(commitment)という行為の重要性が浮かび上がってくる。すなわち,送り手と受け手の両者がともにあるコミュニケーションの話題のなかに関与し,同じ話題を共有している(だろう)ことを伝え合う相互フィードバックの試みが,意味の共有を成立させるのである。「今日は暑いね」というA氏の語りかけは,B氏が無反応ではそれがコミュニケーションとして成立したかどうか不明である。しかし,B氏がA氏の語りかけを前提として反応を返してくるならば(「汗が止まらないね」と発言するなど),A氏は自分のメッセージは伝わったと仮定できる。B氏がA氏のメッセージに対して自らの発言を通じてA氏の話題設定にコミットメントを行い,それを前提とした自らのメッセージを記号化して送ってきたからである。こうしたコミットメントの相互過程が意味の共有を成立させるのであって,共有のルールが元から存在しているから意味の共有が成立するのではない。もちろん日常のコミュニケーションではルールが共有されていると多くの人が信じていることは事実であるが,そのことがしばしば誤解等を拡大させる要因ともなる。  コミュニケーションの伝達の第二の問題は,メッセージのなかに何を読みとるか,という問題である。非言語的コミュニケーションの問題はこれと大きく関わる。国会に喚問された証人が「5億円は受け取っていません」と証言しながら,唇がふるえ,脂汗をかいていたとしよう。このとき多くの受け手は彼の字義どおりのメッセージだけを解読したりはしない。コミュニケーションにおける非言語的要素の重要性はここに示される。また,非言語的要素のどこまでを言語的メッセージに付随し解読すべきものとして受け取るかによって,記号解読される情報の内容は異なる。唇がふるえているのは,証言がうそなのではなく,国会という場が彼を緊張させているだけなのかもしれない。その場合非言語的要素は「うそ」を解読する側にとってはノイズであるということになる。  コミュニケーションは,必ずしも一対一の状況で生じるとも,対面状況で生じるとも仮定することはできない。このことから,第三者を含むコミュニケーションにおける情報の共有問題が生じる。また,対面状況以外でのコミュニケーションのメディアでは,非言語情報の伝達の問題とも関連して,それぞれのメディアに独特の問題がある。電話メディア,テレビ・メディア,電子メディア,それぞれに固有の問題と適応形態がある。 →記号 →符号化 →復号化 →マス・コミュニケーション →言語 →談話 →非言語的コミュニケーション →身体言語 →情報処理《池田謙一・村田光二1991→vid.文献 ◆池田謙一

心理学辞典 ページ 716 でのコミュニケーション単語。