刻印づけ 【コクインヅケ】🔗⭐🔉振
刻印づけ 【コクインヅケ】
imprinting
ニワトリ,アヒル,カモなどのように孵化直後から開眼し,歩行可能な
離巣性(早成性)の鳥類の雛では,孵化後の特定の時期に目にした「動くもの」に対して後追い反応を示す。親だけでなく,多種の動物や人,動くおもちゃ,あるいは点滅光であっても,後追い反応が生じる。この現象を刻印づけ,あるいは刷り込み,インプリンティングという。
ローレンツ(Lorenz, K.1935)によってこの現象が初めて詳しく報告された。刻印づけは,通常の
学習にはみられない以下のような特徴が指摘されている。(1)敏感期の存在:孵化後のかなり早期の感受性の高い時期にのみ生じる。(2)練習や経験が不要で,条件が満たされた時に,きわめて短い時間のうちに成立する。(3)無報酬性:通常の学習の時に必要とされる
報酬を必ずしも必要としない。(4)不可逆性:特定の対象に刻印づけが成立した後に,対象を変更することは困難である。通常の学習にみられる
消去が成立しない。(5)性的刻印づけ:性成熟に達した後に生じる
求愛行動は刻印づけされた対象と同種の動物に向けられる。
刻印づけはかなり固定的なプロセスではあるが,自然場面では,孵化直後の雛が目にする最初の動くものは母鳥であり,この母鳥への後追い行動は雛の発達初期の生存にきわめて適応的な行動と理解される。さらに,刻印づけは性成熟後の同種との適切な配偶行動に不可欠なものと考えられる。刻印づけに類似した現象が早成性の鳥類だけでなく,晩成性の動物にもみられること,また,この現象が親子の相互の認知,
愛着の形成,同種他個体の認知などとも深く関係していることから,多方面から関心が寄せられている。
→初期経験 →臨界期
→vid.文献
◆中道正之







心理学辞典 ページ 692 での【コクインヅケ】単語。