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行動     【コウドウ】🔗🔉

行動     【コウドウ】 behavior  そのときどきの環境条件において示される,有機体(生活体)の運動や反応,あるいは変化。心理学において,有機体とは人間をはじめとする動物のことであるが,物理学や化学においては,行動という用語は物質に対しても用いられる。  ダーウィンの比較心理学的研究(Darwin, C. R.1872)にはじまり現代に至る行動研究の流れには,二つの大きな系統がある。その一つは動物学としてのもので,モーガン,ホイットマン(Whitman, C. O.),クレイグ(Craig, W.),ユクスキュル(Uexkll, J. von)らの先駆的研究を経て,ローレンツティンベルヘンエソロジー(動物行動学,比較行動学,習性学)に至る流れである。この系統では,おもに,走性反射本能行動など,生得的で種特異的な行動が比較され,行動の進化が研究された。いま一つの流れは心理学におけるもので,心理学を行動の科学と再定義した,ワトソン行動主義宣言から,ハルトールマンガスリースキナーらの新行動主義を経て,現代心理学に至る流れで,おもに獲得的な学習行動が対象とされた。最近では,この二つの流れは生命科学の一分野として統合される方向に進んでいる。  現代心理学の対象を意識ではなく観察可能な行動とする立場は,少なくとも方法論的行動主義の意味において,多くの心理学者に受け入れられてはいるが,行動そのものの定義については定まったものがない。有機体の行動は,筋運動や腺分泌など,物理的・生理的な要素的運動として,すなわち分子的行動として,微視的に捉えることもできれば,それ自体固有の特性を有する一つの全体的行動として,すなわちモル行動として,巨視的に捉えることもできる。行動主義心理学が対象とするのは主としてモル行動であるが,分子的行動とモル行動の関係に関し意見の相違が大きい。ワトソンやガスリーはモル行動を分子的行動のたんなる集合として分析可能とするのに対し,トールマンやハルは,モル行動自体に,分子的行動を超えた,全体としての固有の意味があるとし,論理的構成概念である仲介変数の必要性を主張した。また,直接観察する手段があるかどうかで,顕在化行動(overt behavior),潜在化行動(covert behavior)という区別をすることがある。この他,機能や構造,発現機制や属性などから,行動に関するさまざまな分類がなされた。スキナーは,誘発刺激の有無によって,レスポンデント行動オペラント行動を区別した。行動に空間的・時間的構造を見出すことも多く,欲求行動(appetitive behavior)と完了行動の区別や,中間活動(interim activities)と最終反応の区別はその例である。 →刺激 →反応 →反射 →本能 →学習 →行動主義 →新行動主義 →エソロジー →モル行動 →分子的行動 →オペラント行動 →完了行動 →最終反応 →vid.文献 ◆山田恒夫

心理学辞典 ページ 655 での行動     単語。