抗うつ薬 【コウウツヤク】🔗⭐🔉振
抗うつ薬 【コウウツヤク】
antidepressant
うつ病,うつ状態の治療には,休養,
薬物療法,環境調整,
精神療法的接近,
電気痙攣療法,断眠療法,高照度光療法などがあるが,抗うつ薬は薬物療法の時に用いられる薬剤である。代表的には,(1)三環系抗うつ薬,(2)
モノアミン酸化酵素阻害剤(MAOI),(3)その他に大別される。(1)はクーン(Kuhn, R.)によりイミプラミンの抗うつ作用が発見されたことに始まる(1957)。同じ頃(2)のイプロニアジドの抗うつ作用が発見され,(1)は感情調節剤,(2)は精神賦活剤とよぶことがある。(1)は現在最も広く使われ,化学構造よりイミノジベンジル誘導体であるイミプラミン,ジベンゾシクロヘプタディン誘導体であるアミトリプチリンが代表的である。(1)の作用としては抗抑うつ,抗抑制,抗不安の三つの作用があるといわれ,その必要度により使い分けられている。(2)は現在サフラジン1種類のみであるが,重篤な肝障害を起こすことがあるため,使用が制限されがちである。(3)には抗躁薬として有名な炭酸リチウム,四環系抗うつ薬があるが,前者は双極性うつ病のうつ状態および病相周期に対する予防的使用にも効果があるといわれている。後者は(1)の抗コリン性の副作用が少ないといわれており,マプロチリン,アモキサピン,ミアンセリン等があり,合併症のある場合や高齢のうつ病でも用いられることもある。
(1)の副作用としては,口渇,めまい,ふらつき,眠気,便秘,排尿障害などがあるが,対処療法を行いながら服用を続けるのが一般的であり,禁忌としては,緑内障,心筋梗塞の回復期である。老人に多くみられるが,
せん妄が起こったり,マヒ性イレウス,躁うつ病が躁転した時に投与中止が考慮される。(2)の禁忌は,肝・腎障害,うっ血性心不全,高血圧症,褐色細胞腫のある患者である。
抗うつ薬を用いることにより,症状を軽くさせ,入院が避けられ,経済的にも心理的にも負担が減ってきた。しかし一方,うつ病の慢性化や難治性の問題も今後の課題として残されている。
→気分障害 →向精神薬 →モノアミン酸化酵素阻害剤
◆芦刈伊世子





心理学辞典 ページ 621 での【コウウツヤク】単語。