言語相対性仮説 【ゲンゴソウタイセイカセツ】🔗⭐🔉振
言語相対性仮説 【ゲンゴソウタイセイカセツ】
Sapir-Whorf hypothesis ; linguistic relativity hypothesis
サピア = ウォーフの仮説ともよばれる。ドイツの言語学者・哲学者フンボルト(Humboldt, K. W. von)の伝統をアメリカの言語学者
サピア(Sapir, E.1949)およびその弟子であるウォーフ(Whorf, B. L.1956)が発展させたもの。普通考えられている言語相対性仮説は,
言語の形式が
思考の形式を決定するという原則(言語的決定論 linguistic determinism)を前提とする。この原則と,言語記号による外界の切り取り方は
文化によって異なるとする言語相対性の原則から,我々の思考は言語ごとに異なるという言語相対性仮説が出てくる。たとえば,ウォーフによれば,エスキモーは,雪に関して複雑な区別をするが,「雪」という語がないため,「雪」という一般概念がない。また,言語によって色の名づけ方は異なり,色の名づけ方が色の認知自体に影響を与えるという主張もなされていた。西欧の論理が普遍的であり,それに従わない文化は,未開であり劣等であるという,18,19世紀の考え方に対するアンチテーゼとして出され,インディアンやエスキモーなどにみられる西欧以外の思考方法,論理を対等なものとしてみることに寄与した。なお,サピア,ウォーフ自身は,言語と文化の因果関係を肯定しているわけではないが,言語相対性仮説の俗流解釈では,言語が文化や民族の思考法を形成するといった解釈をする場合がある。
一時は非常に影響をもった仮説であるが,現在は,言語的決定論の前提をもつ強い相対性仮説をとる学者は少ない。ウォーフのあげた例がその後の調査で実際には正しくないことが明らかになってきたこと,心理実験による裏づけを得られなかったことがそのおもな理由である。しかし,言語によって表現しやすいことと表現しにくいことがあるという,弱い意味での言語相対性は今でも有効性をもつと考えられている。
→言語 →範疇的知覚
→vid.文献
◆田窪行則




心理学辞典 ページ 597 での【言語相対性仮説 】単語。