系統発生/個体発生 【ケイトウハッセイ/コタイハッセイ】🔗⭐🔉振
系統発生/個体発生 【ケイトウハッセイ/コタイハッセイ】
phylogeny / ontogeny
発生(development)とは,生物の系が時間軸にそって変化することであり,一般的には単純な系からより複雑な系へ,さらには衰退へという変化をさす。系統発生とはそういった変化を進化的に種族レベルでみた場合,個体発生とは個体レベルでみた場合をそれぞれいう。ともにヘッケル(Haeckel, E. H.1866)によって,生物の形態における変化を説明するために用いられた。
系統発生の過程の分析には比較という手法が不可欠であるが,最近は形態以外に,
DNAや
タンパク質などによる分子系統学的な分析も行われている。ハインロート(Heinroth, O.)は,そのような時間軸上の変容が
行動という生命現象にもみられるとして,行動の系統発生の研究に新たな道を開き,それが
ローレンツ,
ティンベルヘンらによる
エソロジーの確立へとつながることとなった。形態的な変化のあとづけに化石が有効であるのと比べ,行動には移動の軌跡や食痕などの特別の場合を除いて化石的な証拠がなく,その系統発生的変容過程の把握は現存種の行動比較に大きく依存せざるをえない。現存種間での行動比較の例としては,ローレンツ(Lorenz, K.1965b)のカモにおける求愛その他のディスプレイの近縁種比較や,ファン・ホーフ(van Hooff, J. A.1972)の
笑いの進化の研究などがあげられる。
現存種の比較に依拠するという点に加えて,行動は,生息環境への
適応として比較的容易に変容するという特性をもつ。そのため,形態や分子レベルでの比較に比して行動の比較においては,種族間での類似性が
相同(祖先が共通であることによる類似。Baerends, G. P.1958)なのか相似(祖先は共通でないが生息環境に由来する淘汰圧の共通性によって収斂した機能的類似)なのかが問題になる。
一方,個体発生はいわゆる
発達と同義であり,その過程自体にもそれぞれの種の繁殖戦略を反映した多様性がある。その意味において,個体発生の過程がその種族の系統発生的特性に規定されているということは疑いえないが,個体発生は系統発生を繰り返すという
反復発生説(ヘッケル)の妥当性に関しては議論がある。
→エソロジー →発達 →本能 →相同/相似 →反復発生説
→vid.文献
◆根ヶ山光一











心理学辞典 ページ 558 での【ケイトウハッセイ/コタイハッセイ】単語。