群集 【グンシュウ】🔗⭐🔉振
群集 【グンシュウ】
crowd
不特定多数の人間が,共通の
動因のもとに一時的にある場所に集まってできる未組織な集合体のこと。「群衆」とも表記される。共通動因の発生の仕方の違いによって,(1)事故や災害など予測不能な緊急事態の発生によってできる突発的群集,(2)人々が共通に惹かれるような潜在的動因が存在する場所に大勢の人が一斉に押し寄せてできる偶発的群集,(3)共通の動因をもつ人々が定期的に一定の場所に集まってできる定期的群集の3形態に分類される。また,群集が動態的であるか受動的であるかによって,前者を
暴衆(モッブ mob),後者を聴衆(audience)に分類したうえで,暴衆を攻撃的,逃走的,利得的,表出的の4形態に,聴衆を偶発的,意図的の2形態に分類することもある(Brown, R. W.1954)。さらに未組織性の観点から,同一の目標をもつ者が同一の場所に殺到し競争しあってできる無統制群集,既存の権威や統制に反発してできる反統制群集,あてもなくさまよう人々によってできる非統制群集の3形態に分類することもある。
ル・ボン(Le Bon, G.1895)は,群集に巻き込まれた人は,自己の意思による
判断ができなくなると同時に,群集には個々人の時とは異なる心性が働くとして,
群集心理の特徴を,非合理性,精神的同質性,感情性,
匿名性,無責任性,
被暗示性等にあると指摘した。しかし,最近ではターナーら(Turner, R. H. & Killian, L. M.1987)によって,群集の精神的同質性は幻想にすぎないという
創発規範説が提起されたり,群集に参加する
動機づけは必ずしも同一ではなく多様であり,合理的要素も少なくないという指摘がなされ,知見の再検討が進んでいる。現代を群集の時代と考えたル・ボンに対して
タルドは現代を公衆の時代であると規定したが,
マス・コミュニケーションや情報ネットワークの急激な進化と世界的な広がりに伴って,個々人は空間的に分離しているが,
世論のもとに精神的に集合している群集と定義される「公衆」への関心が高まっており,群集研究は新たな展開をみせている。
→群集心理 →創発規範説 →集合行動 →大衆 →暴衆 →パニック
→vid.文献
◆山口裕幸












心理学辞典 ページ 541 での【群集 】単語。