嗅覚異常 【キュウカクイジョウ】🔗⭐🔉振
嗅覚異常 【キュウカクイジョウ】
dysosmia
嗅覚に何らかの異常がある状態。市原正雄1963は症状によって,嗅覚過敏性増加症,嗅覚減退症,嗅覚脱失症,嗅覚錯誤症,嗅覚幻覚に分類した。嗅覚過敏性増加症,嗅覚減退症,嗅覚脱失症には全般的なものと部分的なものがあるという。嗅覚脱失症の部分的な症状を嗅盲とか特異的無嗅覚症ともよぶ。嗅覚錯誤症は,においを誤って認知するもので,悪臭を良いにおいと感じる芳嗅症や,妊娠時によく起こる嫌いだったにおいを好きになったり,その逆が起こったりする錯嗅症などがある。嗅覚幻覚は,実際に存在しないにおいを感じる症状で,本人だけが悪臭を感じる自覚的悪嗅症,存在しないにおいを感じる幻覚症などがある。嗅覚幻覚は,脳軟化症や
精神病の人にしばしばみられる。
ヘンキン(Henkin, R. I.1967)は嗅覚減退症を,さらに,嗅神経のみの機能喪失によるものを
型,嗅神経のほかに三叉神経,迷走神経,舌咽神経のすべての機能が低下しているものを
型と分けており,
型の原因として負傷,細菌感染,ホルモン異常があげられ,
型の原因として腫瘍,ビタミン不足症,栄養失調,ホルモン異常症,顔面の発育不全があげられるという。
高木貞敬1974は,患者の最も多い嗅覚減退症と嗅覚脱失症の原因から,嗅覚障害を,鼻孔の途中に障害のある呼吸性嗅覚障害,嗅上皮や嗅神経が
嗅球に至るまでの間に障害がある末梢神経性嗅覚障害,前の二つが合併した混合性嗅覚障害,および嗅球を含む
大脳の嗅覚中枢やその経路に障害のある中枢神経性嗅覚障害の四つに分類している。
一方,浅賀英世1994は,文献にみられる分類には定義が明確でなく解釈もさまざまであるとし,臨床でみられる症候から,嗅覚異常を感覚上から嗅覚の程度の異常を示すものと異常嗅感覚を示すものに分け,さらに前者を嗅覚脱失と嗅覚減退に,後者を異嗅症
,異嗅症
,自発性異常嗅感に分けた。異嗅症
ではすべてのにおいをそのもののにおいとは異なったにおいとして感じ,異嗅症
ではにおい刺激があるとそのもののにおいとは関係なく,ある一種のにおい様の感覚が起こり,自発性異常嗅感ではにおい刺激がないのに自発的に異常なにおい様の感覚を感じるという。
→嗅覚《豊田文一ほか1978》
→vid.文献
◆斉藤幸子












心理学辞典 ページ 452 での【嗅覚異常 】単語。