幾何学的錯視 【キカガクテキサクシ】🔗⭐🔉振
幾何学的錯視 【キカガクテキサクシ】
geometrical-optical illusion ; geometrical-visual illusion
平面図形の幾何学的性質(大きさ,長さ,距離,方向,角度,曲率,形など)が,
刺激の客観的性質や関係より,組織的にかつ相当量異なって
知覚される現象である。たんに
錯視と略称される場合,海外も含めて幾何学的錯視をさすことがほとんどである。今日知られている錯視図形の原型は,ほとんど19世紀後半から20世紀初頭にかけて発見・創作されたもので,発見者の名前を冠して区別されることが多い。
代表的な錯視を示す。
図表
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たとえばnは中心に向かって螺旋状に見えるが,指でたどってみればわかるように,実際は同心円上に描かれている。この図形は最も劇的な錯視の一つである。錯視図形の形態は比較的簡単な構造をしているが,現象的には複雑に入り組んでおり,その生起過程も視覚情報処理の多段階にわたっていると考えられる。したがって,錯視全体を単一の説明理論で一括して説明することはほとんど不可能である。錯視の合理的分類の試みも単純には進まないが,今日,少なくとも角度・方向の錯視群(i, j, l)と大きさ・長さ・距離の錯視群(a, c, k)では,現象的傾向および生起過程が異なっていると見なされ,別のクラスターに分類される。また,代表的な錯視理論としては,特徴検出機構に基づいた説明,遠近法説,眼球運動説,場理論,数理モデルなどがある。
幾何学的錯視は,その現象的性質を指摘されたとしても,さらに極端な例としては物差しのような客観的な測定器具をあてがったとしても,錯視効果が解消するような類の現象ではない。おそらく視知覚過程の諸特性がそのまま錯視を発生させることになっているのであろう。その意味で,錯視を研究することから知覚の働きを解明する手がかりが得られるかもしれないとして,現在も研究が続けられているのである。
→錯視 →錯覚 →ミュラー - リヤー錯視 →オペル = クント錯視 →デルブッフ錯視《今井省吾1984;大山正ほか1994》
→vid.文献
◆田中平八








心理学辞典 ページ 405 での【幾何学的錯視 】単語。