カント 【カント】🔗⭐🔉振
カント 【カント】
Kant, Immanuel(1724-1804)
17世紀の
デカルトと並んで近代哲学史上きわめて影響力の大きかった18世紀ドイツの哲学者。ケーニヒスベルク大学教授。
ライプニッツの系統を引く理性主義の哲学者であるが,
ヒュームの経験主義とその論理的帰結である懐疑論に出会って衝撃を受け,理性主義と経験主義の統合を図ろうと志した。厳しい思索の末,ユークリッド幾何学とニュートン物理学の例をもって先天的総合判断が可能なことを示したが,理論的科学としての心理学(理性的心理学)の可能性は否定して,心理学の主題を経験的な人性論に限定した。認識の素材は不可知の対象(物自体)によって与えられる
感覚であるが,受動的感性や能動的悟性のような主観に備わる能力がそれぞれの形式(時空や範疇)に従い,所与としての感覚を順次総合加工して経験が成立する(世界が構成される)と説いたことから,19世紀の生理学者
J. P. ミュラーの
特殊神経エネルギー説や
ヘリングの空間理論の拠り所となった。こうした歴史的事実を踏まえて通常の心理学史ではカントも生得論者に分類され,近年の
認知心理学がカント哲学の再評価と絡めて解説されることも多いが,カントの認識論自体にそうした解釈を許す側面があるとしても,彼が取り組んだ問題は,そもそも科学的知識の普遍性がいかにして保証されるかという科学哲学上の問題で,発生的心理学的問題そのものではないから,上のような分類や扱いには慎重を要する。
→vid.文献
◆高橋澪子








心理学辞典 ページ 381 での【カント】単語。