幼児期 【ヨウジキ】🔗⭐🔉振
幼児期 【ヨウジキ】
early childhood[E]; fr
he Kindheit[G]; enfance[F]
【年齢の区分】 幼児期とは,人類の特徴である直立二足歩行や話し言葉が獲得される1歳代から就学する6歳頃までの時期をさすことが多い。ただし,幼児期の前後の時期である
乳児期や
児童期がどのように特徴づけられるかで,年齢の時期区分は異なってくる。幼児期内部の区分としては,3歳ないし4歳以前を幼児期前期,それ以降を幼児期後期とよんで区別することがあり,この区分は,幼児教育や保育の制度にみられる時期区分ともおおよそ対応している。理論的にも,たとえば
ピアジェは,幼児期に相当する時期を
前操作期とよんでいるが,4歳頃を境として,それ以前を前概念的思考期,それ以降を直観的思考期とよんで区別しており,また,
E. H. エリクソンは,1歳半〜3歳頃を「自律性」対「恥と疑惑」の段階,3歳〜5歳半頃を「積極性」対「罪悪感」の段階とするなど,幼児期の中頃に一つの変化点を設ける考え方が多くみられる。
【運動機能の発達】 幼児期の前半,特に1〜2歳頃では,安定した直立二足歩行の獲得を基礎として,言語的指示に従って目標をもって歩行することや,方向転換することが可能になってくる。手による道具の操作が可能になるのもこの時期である。3歳頃には,走る,跳ぶ,投げる,打つ,蹴る,捕えるなど運動の基本動作が獲得されるようになってくる。また,手や指の微妙なコントロールを必要とする,鉛筆等による線描画や折り紙を折るなどの技能も急速に向上しはじめる。特に3〜4歳以降,片足とびなど,二つ以上の動作を統合して一つの動作とすることが可能になる。そして,4〜5歳以降,運動機能の発達は巧緻性とともに統合性を特徴とするようになる。
【
認知の発達】 幼児は,目の前にあるものであっても,たんに感覚運動的にわかるだけではなく,イメージや言葉に置き換えて理解する,すなわち
表象操作を行うことができる,という点で乳児から区別される。幼児期の初めの頃,たとえば棒きれを馬に見立てるような遊び(
象徴遊び)を行ったり,目の前にはないモデルをまねする行為(
延滞模倣)を行ったりするようになるのは,この表象機能の成立によるものである。
幼児は自他の区別が十分ではなく,他者の視点に立ってものごとを考えることができないという
自己中心性を,児童期とは異なる幼児期の
認知発達上の特徴として指摘したのはピアジェである。ピアジェが主張するような認知発達上の制約が幼児にあることは一面の真実ではあるが,他方,認知心理学者からは,ピアジェは幼児の能力を過小評価しすぎているという批判もある。たとえばゲルマン(Gelman, R.)は,ピアジェの行った数の保存課題を,課題解決にとって不適切と考えられる要素をできるだけ排除した条件で実施し,幼児でも数の不変性が理解できる,すなわち,ある条件下では幼児でも
保存性が理解されうると主張した。幼児期と児童期の間に認知発達上の質的な違いがあるかどうかはいまだ議論の分かれるところであるが,少なくとも個々の認知的な技能(skill)に関しては従来考えられていたよりも幼児は有能であるということはできよう。
【
社会性の発達】 1〜2歳頃では,鏡に映った自分の像を自分だと理解したり,自分の名前と友だちの名前を区別するようになるなど,自己の身体像の確立や自他の分化が生じるようになる。3歳頃には,自分の性別を意識するなど,自己と他者を区別し比較するようになり,自分の主張や要求のとおし方は強烈かつ巧妙になってくる。親が指示したことに強い抵抗を示すところから,第一次
反抗期とよばれていたのも3歳頃である。4歳頃になると,他者が自分をどのようにみているかに非常に敏感になってくる。5〜6歳頃には,自律的な自己調整力が働くようになり,課題に対して持続的に取り組むとともに,自分の達成したことと他者が達成したことを比較することで競争心が芽生えるようになる。そのようなプロセスを経て,この時期の子どもは,
ひとり遊びよりも集団遊びを志向するようになる。いずれにせよ幼児期の特に後期において経験される集団生活は,子どもの社会性の発達に重要な影響を与えているということができる。
→自己中心性/脱中心化 →前操作期 →幼児心理学 →発達心理学 →反抗期《柏木惠子1988;瀬地山澪子1972;園原太郎・黒丸正四郎1966;田中昌人・田中杉恵1984−88;藤永保1990;森下正康1992》
→vid.文献
◆竹内謙彰
















心理学辞典 ページ 2197 での【幼児期 】単語。