複数辞典一括検索+

誘発電位     【ユウハツデンイ】🔗🔉

誘発電位     【ユウハツデンイ】 evoked potential  感覚刺激を与えたり,感覚受容器やその神経伝導路を電気刺激すると,脊髄脳幹(中継核),大脳などから,それらの刺激と時間的に関連した一過性の電位変動を記録することができる。古くから神経生理学の研究方法として動物実験で用いられてきた。しかし,コンピュータの発達によって,容易にヒトからも記録できるようになり,医学臨床での有用性からも,今日では特に断らない限り,誘発電位といえばヒトの記録である。 【記録方法】 頭皮上においた電極から脳波を記録しながら,何らかの感覚刺激(例:クリック音)を呈示すると,その脳波に変化が生じる。しかし,その変化は,本来の脳波に比較して微弱で,1回の感覚刺激の呈示では検出できない。この電位変化は刺激の呈示時点からいつも一定の潜時で生じるので,この性質を利用して抽出される。つまり,コンピュータを使用して,脳波をその刺激時点で揃えて加算することによって,抽出できる(約50〜1000回の加算)。たとえとしては,海の大きな波のなかに小石を投げ込んだ時に生じる小さな波紋を想像するとよい。つまり,小石を投げ込んだ時点であわせて,その時の波を加算平均すると,小石によって生じた波紋だけを取り出すことができる。 【誘発電位の種類】 種々の感覚刺激によって,聴覚誘発電位(下図),視覚誘発電位,体性感覚誘発電位などがある。これらは,いずれも他覚的感覚検査(少なくとも,それらの刺激が各感覚器で神経信号に変えられ,上行性神経路を通って,大脳皮質まで入力されたこと,あるいは,そこまでに障害のないことの証明となる)として有用である。なかでも,聴覚の脳幹聴覚誘発電位(図の中のからの波)は,乳幼児の聴覚検査として,耳鼻科領域で定着している。 図表  また,これらの誘発電位の成分は,主として潜時を基準にいくつかに分けることができる。(1)短潜時誘発電位とよばれる,感覚受容器や上行性神経路(脳幹部)で発生している電位を記録した遠隔電場電位(上記の脳幹聴覚誘発電位は,これに当たる)。それらより潜時の遅い成分(中潜時,長潜時誘発電位,図の中の10ミリ秒以降の成分)は,以下の2種類の成分からなっている。(2)大脳皮質の各感覚野などで発生する成分。(3)上行性網様体から大脳皮質連合野にいたる非特殊系における反応。これらについては,各誘発電位のなかのどの成分がどれに当たるのか,諸説あるものの,まだ明確ではない。 →事象関連電位 →脳波 →脳幹聴覚誘発電位《下河内稔ほか1997→vid.文献 ◆投石保広

心理学辞典 ページ 2184 での誘発電位     単語。