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問題解決     【モンダイカイケツ】🔗🔉

問題解決     【モンダイカイケツ】 problem solving[E]; Problemlsung[G]  生活体が,何らかの目標を有しているが,その目標に到達しようとする試みが直接的にはうまくいかないという問題場面において,目標に到達するための手段・方法を見出すことを問題解決という。  心理学的に問題解決をどのような過程として扱うかについては,大きく分けて次の三つの立場がある。(1)刺激反応との連合から説明する立場:ソーンダイクは,問題箱に入れたネコに箱から脱出する方法を見つけさせる実験で,初めはさまざまな反応をするなかで偶然に正しい反応をするのみであるが,そうした試行を繰り返すうちにしだいに箱に入れられるとすぐに正しい反応をするようになることを見出した。ソーンダイクは,こうした問題解決過程を,試行錯誤を通じて刺激と反応の適切な連合を形成する過程と捉えた。以後の行動主義においても,基本的には問題解決をこのような試行錯誤に基づく刺激と反応の連合の理論によって説明しようとしている。(2)洞察による場の再体制化であるとする立場:ゲシュタルト心理学者であるケーラーは,目の前におかれた金網の向こう側にある餌を取ろうとするイヌが,餌からいったん遠ざかって金網を迂回する(まわり道)行動をすぐにとることができることや,チンパンジーがばらばらにおかれた棒や箱といった道具をうまく組み合わせて餌をとることができることなどを実験的に示し,その際の観察から,こうした問題解決場面において動物はやみくもな試行錯誤を繰り返すというよりは,突然の洞察によって場面の構造を見通すことによって問題を解決していると考えた。(3)情報処理の過程として捉える立場:この立場では,問題解決は,初期状態から最終的な解決状態への問題状態(problem state)の変換の連鎖として捉えられる。そして,さまざまな問題状態やそれらの変換のための手段(操作子 operator)など問題を構成するものがどのような内的表現をとっているか,変換のためにどのような方略プラン,またアルゴリズムヒューリスティックスを用いているかといった点が主要な研究対象とされる。認知心理学はこの立場をとるが,そこではしばしばコンピュータ・プログラムの形で問題解決の過程が表現されるため,コンピュータ科学とのつながりも深く,認知科学という学際領域を形づくっている。  問題解決の研究においては,さまざまな(原理的にはありとあらゆる)問題が使用されうる。しかし実際には,研究の目的やアプローチの仕方などによってそれぞれ頻繁に用いられる問題群といったものがある。(1)の研究では,先にあげた問題箱や迷路問題がよく用いられ,過去の経験による刺激と反応の連合の連鎖や階層構造から問題解決を説明していく。(2)ではいわゆる洞察問題が用いられることが多い。洞察問題とは,一般に解決にいたるステップのうちの特定の部分のみが決定的かつ困難であり,そこさえクリアできれば,全体が解決されてしまうというような問題である。その困難なステップが洞察のステップであり,そこをクリアする際にアハー体験が生じる。たとえば,「箱問題」では,紙箱に入ったろうそく,マッチ,押しピンなどが与えられ,それらを適当に用いてドアにろうそくを設置するよう求められる。この問題では,容器として与えられた紙箱を燭台として利用せねばならず,そのことに気づくということが洞察のステップとなる。(3)では,解決にいたるまでにかなり多くのステップを要し,それぞれのステップから次のステップへの問題状態の変換の連鎖として解決が捉えられるような問題が用いられる。たとえば,しばしば用いられる問題にハノイの塔がある。ただし,この立場での研究は現在も盛んに行われており,「ハノイの塔」のような,問題を解決するためにわずかな知識のみを必要とし,また解決するために必要な知識が問題中にすべて含まれている「よく定義された」(well-defined)問題ばかりではなく,解決のために豊かな知識を必要とする問題(物理学,数学,医学,コンピュータ・プログラムなどの問題)や,解決のための知識が問題中に含まれていない「よく定義されていない」(ill-defined)問題も最近では頻繁に用いられている。 →目標 →刺激 →反応 →連合 →問題箱 →試行錯誤 →行動主義 →条件づけ →洞察 →体制化 →まわり道 →情報処理 →方略 →プラン →アルゴリズム →ヒューリスティックス →認知心理学 →認知科学 →アハー体験 →ハノイの塔《Hull, C. L.1943;Newell, A. & Simon, H. A.1972;Wertheimer, M.1945;矢田部達郎1949→vid.文献 ◆山崎晃男

心理学辞典 ページ 2159 での問題解決     単語。