モジュラリティ 【モジュラリティ】🔗⭐🔉振
モジュラリティ 【モジュラリティ】
modularity
人間の
脳の処理システムが,それぞれ独立した機能をもつ多くの下位システム(
モジュール)から構成される,とする考えのこと。モジュール性ともいう。フォーダー(Fodor, J. A.1983)による人間の認知的処理機構に関する提案をはじめ,
大脳の
機能局在説や初期視覚処理機構の独立性,さらには,
言語のような人間の知識構造をいくつかの独立した構成単位に分割して記述する試みなどにもこの用語を用いることがある。ここではフォーダーが唱えたモジュラリティの概念について説明する。
フォーダーによれば,人間の認知的処理機構は,変換器(transducer)―入力系(input system)―中央処理器(もしくは中央系 central system)の三つに機能的に分類でき,このうち,変換器(感覚
受容器)からの情報を解釈して中央処理器で利用できるように働く入力系が,モジュールとしての性質をもつ。モジュールのおもな特徴としては,(1)情報遮蔽性(information encapsulation):あるモジュール内部の処理に他のシステムは関与できない,(2)領域固有性(domain-specificity):モジュール内部の処理では固有の情報のみが扱われる,(3)強制性(mandatoriness):モジュールを通過する情報は強制的に処理される,(4)処理の高速性(speed),(5)他の処理系から
アクセスできないこと(lack of access by other systems),(6)浅い出力(shallow output):モジュールはある領域の情報に関する特定のタイプの処理結果のみを出力し,それ以上の計算は行わない,などがあげられる。このように,モジュールの働き方に多くの制約を課すことによって,認知的処理機構を簡明かつ頑強に記述し,その処理の自動性・高速性を保証することができる。
またフォーダーのモジュラリティ説は,
チョムスキーの
生成文法理論における人間の言語知識構造に関するモジュラリティ説との緊密な関連のもとに提案されたものであり,特に言語処理過程を中心とする近年の
認知科学研究の発展に大きく寄与した。しかし,中央処理器の処理に関する記述があいまいなこと,モジュール的機構の生得性に対する発達研究者からの批判,モジュール説を容認しつつもモジュール間の相互作用を認めようとする立場の存在など,多くの問題点が指摘されており,フォーダーの提案は今なお認知科学全般にわたる大きな争点の一つとなっている。
→機能局在 →生成文法 →言語
→vid.文献
◆井上雅勝










心理学辞典 ページ 2139 での【モジュラリティ】単語。