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味覚     【ミカク】🔗🔉

味覚     【ミカク】 taste ; gustation ; gustatory sense 【味覚の意義】 生体の特殊な受容器味細胞)に外界の化学物質が接触して生じる感覚である。味覚の本来の働きは,口腔内に取り込まれた物質を,摂取してよいもの(栄養物,エネルギー源)と,吐き出すべきもの(毒物)とに選別することである。また,味覚の脳内中枢と食欲の中枢の間には緊密な連絡があり,つねに両者一体となって機能することにより適正な食行動が発現する。このような生得的な味覚機能のほかに,次のような習得的な働きもある。初めて経験する食べ物に対しては警戒して慎重になる(新奇恐怖)が,そのあと気分が悪くなったり消化管の調子が悪くなると,その味を長く記憶にとどめ,二度とその物質を摂取しようとしない(味覚嫌悪学習)。逆に,体調が好転した場合は,やはりその物質の味を手がかりにして,好んで摂取するようになる(味覚嗜好学習)。すなわち,味は容易に記憶され,しかも,その記憶は長く持続する。このような学習がもとになって各人固有の食べ物に対する好き嫌いが生じる。 【味の種類】 味には,甘味,塩味,酸味,苦味,うま味の五基本味,それらの混合による食べ物の味,さらに,辛味(香辛料の味),渋味など,味覚と口腔粘膜の温度感覚痛覚との複合によって生じる感覚がある。甘味は,エネルギー源の信号と考えられ,快感を呈する。甘味物質は,各種糖類のほか,グリシンやアラニンなどのアミノ酸,サッカリン,チクロなどの人工甘味物質,ステビア,グリチルリチン,タウマチン,モネリンなどの天然甘味物質など多様であるが,すべて,味細胞膜中の甘味受容タンパク質に結合する。純粋の塩味は塩化ナトリウムの味であり,ミネラルの信号とされ,低濃度では快感,高濃度では不快感を呈する。酸味は,水素イオンの刺激作用で生じ,低濃度では快感,高濃度では不快感を生じる。有機酸は体内代謝過程を活性化するが,一方で,酸は腐敗物の信号でもある。苦味は,アルカロイド,アミノ酸など多種類の疎水性物質によって生じる非常にいやな味である。疎水性は多くの毒物がもつ共通の性質であるため,苦味は,生体に有害な物質を検知し,その摂取を防止するための信号と考えられる。うま味は,グルタミン酸ナトリウムやイノシン酸ナトリウムの味であり,タンパク質の信号とされている。 【味覚の官能評価】 味覚閾値いきちには,水とは異なる何らかの味がする時の濃度である検知閾(判断閾)と,その味の質がはっきりわかる認知閾(知覚閾)があり,後者は前者の1.5〜2.5倍の大きさである。一般に,酸味,苦味の閾値は他の味の閾値に比べて非常に小さい。味覚閾値は,測定法の相違,被験者の年齢,性別,喫煙の有無,溶液の濃度などによって変化する。舌尖部は甘味,舌縁部は酸味,舌根部は苦味に敏感で,塩味は舌全体で同じように感じるとされているが,近年,この知見に異論を唱える研究者もあり,再検討を要する。  刺激を持続していると感覚の強さが減弱していくことを順応という。各基本味につき約5〜10秒で味覚は順応する。後味というのは,この順応の過程を味の持続性という観点からみたものである。味には対比現象がある。これは,ある味の影響で別の味の感受性が変化することをいう。たとえば,舌の片側を酸で刺激すると対側の塩味に対する感受性が低下する。  味覚の反応時間は,味質の違いや味の強さによって相違するが,一般に,反応時間(T)と濃度(C)の間には,T=a+b/C(a, b は定数)の直角双曲線の式があてはまる。閾値付近の反応時間は,味の種類によらず1.5から2秒の間にあるが,高濃度の溶液では,食塩(塩味)と塩酸(酸味)で約0.4秒,砂糖(甘味)とキニーネ(苦味)で約0.7秒である。 【味覚の中枢機序】 化学物質は味覚受容器である味細胞を興奮させ,その情報は味覚神経を通って中枢神経に送り込まれる。味覚情報は,延髄の孤束核に送られ,消化液分泌,顔面表情変化,インシュリン分泌などの反射活動を生じさせる。孤束核に入った味覚情報はさらに上行し,視床を通って大脳皮質味覚野に送られ,味の強さや質の分析が行われる。また,味覚情報は,大脳辺縁系にも送られ,快 = 不快(おいしい = まずい)などの情動行動が生じる。 →味の四面体 →化学的感覚 →化学的受容器 →味覚伝導路 →味覚野 →味細胞 →味盲 →味蕾 →うま味 →味覚嫌悪条件づけ →味覚嗜好学習《河村洋二郎1993;佐藤昌康1991;山本隆1996;山野善正・山口静子1994→vid.文献 ◆山本隆

心理学辞典 ページ 2085 での味覚     単語。