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マス・コミュニケーション     【マスコミュニケーション】🔗🔉

マス・コミュニケーション     【マスコミュニケーション】 mass communication  人間コミュニケーションの一類型としてのマス・コミュニケーションは,次のように定義できる。すなわち,マス・コミュニケーションとは,専門職業的な組織体としての送り手が,メッセージの大量複製技術手段を用いて,不特定多数の受け手に対して行う,公開性という特性をもったコミュニケーションである。定義を構成する個々の要素に,さらに説明を加えよう。  第一に,マス・コミュニケーションの第一義的な送り手は個人ではなく組織体である。現実には新聞社,放送局,出版社などといった形態をとるこの種の組織は,通例マス・メディアと総称され,メッセージの制作や流通に携わる多くの専門職の分業からなる。マス・メディアに「素材」を提供する個人や集団(情報源としての政治家や官庁,技能やアイディアを提供する芸術家や作家など)も,広い意味では送り手に含めることができよう。しかし,少なくとも現代の民主主義社会においては,素材をどう取捨選択し,どう加工するかの最終的な権限はマス・メディア組織にあることが多い(編集権,編成権などとよばれる)。  第二に,マス・メディア組織で制作されたメッセージは,さまざまな技術手段を用いて,大量に複製され,流通過程にのせられる。印刷物やレコード・CDのように,メッセージを物理的なパッケージに載せ,それを複製する場合もあれば,放送のように,メッセージが個々の受信機上に電子的に複製される場合もある。いずれにせよ,こうした技術は同一メッセージの大量伝播には適した方法ではあるが,フィードバック,すなわち個々の受け手が自らの反応や意向を送り手に伝えるには不向きな方法である。ここから,マス・コミュニケーションにおける情報の流れの一方向性という特性も派生する。  第三に,マス・コミュニケーションの受け手は,不特定多数という言葉で一括できるような,広範な地域に散在した,大量かつ異質な人々からなる。送り手からみた受け手は匿名的な個々人の集合体としてしか捉えられないし,受け手相互の関係も(家族や友人などごく身近な人を除けば)大部分が匿名的であり,組織だった相互作用も存在しない。こうした不特定多数としての受け手が,一時的にせよ送り手が提供する同一のメッセージに同時に注目するという点に着目すれば,マス・コミュニケーションには大衆現象としての側面があることがわかる。  第四の,公開性という特性について。これは第三の点と重複することではあるが,マス・コミュニケーションの最も重要な特性といえる。マス・コミュニケーションは,少なくとも受信に関しては,すべての人に開かれたコミュニケーションである(ただし最小限の経済的能力と知的能力は必要とするが)。この点でマス・コミュニケーションは,同じような大量複製技術手段を用いながらも公開性をもたない他のコミュニケーションの形態(特定集団の成員のみを対象にした会報紙・誌や閉回路テレビ放送など)と区別されうる。もちろん,現実のマス・メディアは一定の地理的・文化的制約(市場)のなかで,特定の集団や階層を「ターゲット」としてメッセージを制作することが多い。しかしそうした場合でも,ターゲット以外の人が受け手になることを排除するものではないし,排除しきれるものでもない。この公開性の原則ゆえに,マス・コミュニケーションで伝えられたメッセージは,社会の多くの成員が共有している知識,あるいは共有すべき知識として見なされる。もちろんこれは,同一メッセージに誰もが同じように反応し,同じような効果が生じることを意味するものではない。  最後にインターネットとの関連について付言したい。近年急速な普及を見せているインターネットの WWW(World Wide Web)は,個人や団体がマス・メディア組織の力を借りずに,比較的低コストで自らのメッセージを不特定の人々に公開することを可能にした。その意味で,公開性という特性はマス・コミュニケーションの専売特許ではなくなりつつある。ただし,WWW は個々の受信者が発信者のサイトにアクセスし情報を検索するものであり,したがって,マス・コミュニケーションのように多数の利用者が同一メッセージを同時に享受するには適していない。 →マス・メディア →コミュニケーションの二段の流れ →大衆《DeFleur, M. L. & Ball-Rokeach, S. J.1989;McQuail, D.1994→vid.文献 ◆竹下俊郎

心理学辞典 ページ 2064 でのマスコミュニケーション単語。