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方略     【ホウリャク】🔗🔉

方略     【ホウリャク】 strategy  ある問題状況に直面したとき,人は自分なりの論理や習慣にしたがって,時間を節約したり,精神的努力の効率性を高めようと,どこに注意を向け,どのように符号化し,適切な情報をどのように検索するかを決定,実行を試みる。方略とは,こうした能動的な情報処理活動を引き出す背景にある一定の規則性をいう。方略がかかわる心的過程が複雑であればあるほど,それを分析単位として厳密に記述するためには,コンピュータ・プログラムに即したモデルが必要となる。アルゴリズムヒューリスティックスはその例である。このようなモデルにおける方略は,現在の状態を別の状態に変換するオペレーターを一定の制約条件のもとで選択する仕方として表現され,方略に関する仮説の適合性は,プログラム実行結果の分析に基づいて客観的に検証される。  方略という用語は,元来フォン・ノイマン(von Neumann, J. L.)らによる「ゲーム理論」のなかで,一連の手番で可能な手の選び方を指示するために使用された。心理学においては,ブルーナーら(Bruner, J. S. et al.1956)が概念達成課題において,呈示された事例から概念の規定条件に関する情報を収集する仕方を称したのが始まりといわれる。その後,刺激次元の抽象という同様の観点から,方略によって弁別学習における選択的注意のメカニズムや仮説検証パターンの記述が行われるようになった。  しかし,方略という語の真義は行為主体の外部に存する選択肢の取捨選択ではなく,主体自らが能動的に心的過程を制御する活動の強調にある。S-R説では説明できない学習転移の問題への関心,情報処理理論に基づく記憶思考の研究の展開とともに,方略という語が幅広く使用されるようになったのである。現在では方略のあり方が認知パフォーマンスの差異を支配するという考え方が一般的であるが,課題解決にとって効率的な方略の実行には,課題や方略それ自体についての手続的知識,理解の程度についての自己評価といったメタ認知が深くかかわっているといわれる。また,既存のレパートリーから受容的に方略を選択するのではなく,課題に直面して多様な方略を生みだし適用していく側面も見落としてはならない。 →受容方略/選択方略 →焦点方略 →走査方略 →知覚の方略 →問題解決 →アルゴリズム →学習セット →記憶術 →記憶発達 →転移 →洞察 →メタ認知 →ヒューリスティックス →プラン →モジュール《Newell, A. & Simon, H. A.1972;Siegler, R. S. & Jenkins, E.1989;山内光哉1983→vid.文献 ◆橋本憲尚

心理学辞典 ページ 2032 での方略     単語。