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忘却     【ボウキャク】🔗🔉

忘却     【ボウキャク】 forgetting  思い出したり意識することができないこと。おもな忘却の理論としては,記憶痕跡減衰説干渉説検索失敗説,抑圧説がある。  記憶痕跡の減衰説は,再生成績が時間の関数として低下するというエビングハウス忘却曲線をもとに,記憶したものの痕跡が大脳のどこかに形成され,これが時間の経過とともにしだいに消失し,ついには思い出すことができなくなるとした。反論として,フラッシュバルブ記憶が報告されている。  干渉説は,減衰説に反論してマギュー(McGeoch, J. A.1932)によって提唱された説であり,記銘前後になされたさまざまな精神活動の干渉によって記憶は影響を受け,そのため忘却が起こるとする。先に記憶したことに後で起こった事象や精神活動が干渉した場合には逆向抑制とよばれ,過去に学習したことが新たな記憶に干渉するという場合には順向抑制とよばれる。このような干渉の程度はウィッケンズ(Wickens, D. D.1970)によって,干渉を及ぼすものと干渉を受けるものとの間の類似性に関係していることが知られている。  検索失敗説は,忘却は記憶痕跡減衰説や干渉説のように記憶の消失ではなく検索の失敗が原因で生じるとする。つまり,情報は記憶に貯蔵されたままであるが検索できない状況になったために想起できないとする。なかでも,知覚内容に対してなされた特定の符号化が貯蔵内容を決定するというものを符号化特定性原理という。この原理はターゲット情報を符号化する時には,関連情報も同時に符号化されると考える。したがって,関連情報が検索時の検索手がかりとして利用された場合には,ターゲット情報の検索に成功する。しかし,関連のない検索手がかりが利用された場合には検索に失敗するというわけである。  抑圧説は,精神分析の立場から,不愉快な事柄や自我に脅威を与えるような事柄は,意識の世界から無意識の世界へと押し入れられ,再び意識の世界に上ってこないように抑圧されるとする。これがS. フロイトによって忘却の状況であると考えられた。 →記憶 →記憶痕跡 →干渉 →符号化特定性原理 →検索手がかり →逆向抑制 →順向抑制 →抑圧 →エビングハウスの保持曲線《太田信夫1988a;御領謙ほか1993→vid.文献 ◆中村奈良江

心理学辞典 ページ 2025 での忘却     単語。