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文化     【ブンカ】🔗🔉

文化     【ブンカ】 culture  人類学者が文化の捉え方自体を研究の課題とするのに対して,多くの心理学者は,人間に影響を与える独立変数の一つとして文化を考える。人類学者は,数多くの文化の概念を提起してきたが,一般的に心理学者は,人類学者の概念を引用しながら研究をしてきた。  人類学では,文化に対する認識の仕方においていくつかの大きな流れがある。これらを吉田禎吾1987は,次のように整理している。(1)生活様式の体系:文化を「特定の社会の人々によって習得され,共有され,伝達される行動様式ないし生活様式」の体系(システム)とみる見方。たとえば,知識・信仰・芸術・道徳・法律・慣習などの「複合総体」と文化をみるタイラー(Tylor, E. B.)などの立場。(2)自然環境に対する適応の体系:人間が環境に適応するに必要な「技術,経済,生産,に結びついた社会組織の諸要素が文化の中心」とみる捉え方。(3)観念体系:文化を「共有される観念の体系,概念や規則や意味の体系」とするキーシング(Keesing, R. M.)や,「知覚・信仰・評価・通達・行為に関する一連の規準」と考えるグッドイナフ(Goodenough, W.)らの立場。(4)象徴体系:象徴は「物体・行為・出来事・性質・関係について,意味内容をあらわす媒介手段」であり,このような「象徴的形態に表現され,歴史的に伝えられる意味のパターン」を文化としたギアーツ(Geertz, C.)や,「文化を『人間精神』の生みだした象徴体系」として捉えたレヴィ - ストロースなどの見方。  人類学者に共通するのは,文化を私たちが共有するシステムと考えることである。一方,心理学的に文化を捉えようとする心理学者は,個体と環境との関係のなかで文化を見ようとする。たとえば,行動主義者のスキナー(Skinner, B. F.1969)は,「行動を引き起こし,維持する社会的強化随伴性」が,文化であると考えた。佐藤方哉1976は,このような「随伴関係の集まり」を文化とした。トリアンディス(Triandis, H. C.1980)は,文化を,「道路・建物・道具のような」物質文化(physical culture)と,「人間によって作られたものに対する主観(主体)的(subjective)反応:価値態度役割のような」主観文化(subjective culture)とに区別した。主観文化とは言い換えれば「社会的環境に対するある文化集団特有の知覚の仕方」(Triandis, H. C. et al.1972)である。発達論的視点から渡辺文夫1992は,文化の特質を「精神発達過程の特定の時期に,環境との相互作用により,可塑的に形成され,その後の行動・知覚・認知・動機・情動・態度などを,基本的に方向付ける中核的な反応の型で,ある特定の集団の成員に有意性を持って共通に見られるもの」とした。トリアンディス(Triandis, H. C.1994)は,文化についてのさまざまな見方を検討した後に,次のように文化を定義している。「文化は,人間が作った客観的・主観的要素のまとまりである。それは,過去において,生存の可能性を高め,生態学的に生態系のなかで占める地位において人を充足させ,そのようにして,同じ時間と場とに生活し,共通の一つの言語を持つがために,お互いに理解し合える人々の間で共有されてきたものである」。 →異文化間心理学 →心理人類学 →文化人類学 →文化心理学 →vid.文献 ◆渡辺文夫

心理学辞典 ページ 1963 での文化     単語。