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符号化     【フゴウカ】🔗🔉

符号化     【フゴウカ】 encoding  もともとは情報工学の用語であり,入力情報を情報処理システムにおいて処理可能な形式の信号に変換する過程をさす(たとえば,文字をモールス信号に変換する場合などがこれに当たる)。これに対し,心理学で符号化という用語を用いる場合には,入力された刺激が内的処理が可能な形式に変換され記憶表象として貯蔵されるまでの一連の情報処理過程をさす。  バウアー(Bower, G. H.1972b)は,人間の情報処理過程における符号化の機能として次の四つをあげている。第一は,多様な知覚対象のなかから必要な情報を選択する刺激選択の機能である。たとえば,カルタ(百人一首)の名人は,「む」と聞いただけで「霧立ちのぼる秋の夕暮れ」という札を取ることができる。カルタの名人は,けっして上の句のすべての文字を処理しているのではなく,取り札(下の句)を決定するのに必要な文字(音声)だけを刺激選択しているのである。第二は,書き換えの機能である。たとえば二進法で記述された数字を十進法に書き換える場合などがこれに当たる。第三は,入力された刺激を,ある特定の成分・特性・属性に基づいて記述する成分記述の機能である。たとえば「リンゴ」は,「食べ物」であると同時に,「植物」であり,「禁断の木の実」でもあるというように,多様な成分・特性・属性によって構成されている。符号化の成分記述の機能とは,文脈に応じて適切な成分を抽出し,それに基づいて刺激対象の意味を記述する機能をさしている。第四は精緻化の機能である。精緻化とは記銘材料を呈示されたまま覚えるのではなく,より有意味で記憶しやすい形式に変換する記銘方略の一種である。たとえば,5の平方根(=2.2360679)を「富士山麓オウム鳴く」と変換して覚えれば記憶の負荷を軽減することができる。  このように符号化という用語は,刺激の物理的特徴の検出や分類などの知覚的処理から,リハーサル体制化,精緻化などの記銘方略も含めた幅広い意味で用いられている。 →記銘 →コード →チャンキング →復号化 →リハーサル →記憶の体制化《Gregg, V.1986;Klatzky, R. L.1980;Cohen, G. et al.1986;Loftus, G. R. & Loftus, E. F.1976→vid.文献 ◆森敏昭

心理学辞典 ページ 1909 での符号化     単語。