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表情     【ヒョウジョウ】🔗🔉

表情     【ヒョウジョウ】 facial expressions  表出行動と同義で用いられることもあるが,通常は感情などの心的状態の顔面における表出をさす。表情は皺眉すうび筋,眼輪筋,大頬骨きようこつ筋などの顔面筋の活動によってつくられる。これらの筋群は呼吸器官を構成する筋に起源をもち,横紋筋ではあるが純粋な随意筋ではない。顔面筋はすべて顔面神経核から発する顔面神経の支配を受けているが,中枢から顔面神経核への命令は随意的な性質をもつ錐体路系と不随意の錐体外路系の2種類の経路がある。したがって人間の表情には,随意的な側面と不随意の側面が備わっていることになるが,前者についてはウィンクや挨拶の微笑みのように言語的記号として用いられることも多く,文化による影響も大きい。一方,後者については生物学的に備わった一定のパターンがあり,学習や経験をほとんど必要としない反応と考えられている。たとえば,エクマンらの研究(Ekman, P.1982)によると,幸福,驚き,怒り,嫌悪,悲しみ,恐れ,軽蔑という七つの情動を表す表情は,文化が異なっても共通している。また無脳症児や視聴覚の先天的障害をもつ子どもにも,基本的情動を表す表情が観察されている。  発達的には,生後間もなくから泣きや微笑みの表情が観察され,生後1カ月までに興味,驚き,怒りなどが区別されるという報告もある。一方,他者の表情の認知については,生後6カ月程度では快・不快の区別程度しかできず,2歳から3歳くらいで6種類程度の感情を文脈と結びつけて認知することができるといわれている。  認知次元についての研究によると,表情は,快―不快,注意―拒否,覚醒の程度などの三つ程度の次元に基づいて認知される。表情の識別においては,幸福の表情は全体的特徴を示す低空間周波数領域の情報があれば識別可能だが,それ以外の表情については細部の特徴の手がかりとなる高空間周波数領域の情報が必要である。 →表示規則 →感情の血流理論 →顔面フィードバック仮説 →感情の認知次元 →FACS →顔認識 →混合感情 →非言語的コミュニケーション →感情の三次元モデル →表情の三原理 →喜び《Feldman, R. S. & Rime, B.1991;池田進1987;吉川左紀子ほか1993→vid.文献 ◆中村真

心理学辞典 ページ 1870 での表情     単語。