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パターン認識     【パターンニンシキ】🔗🔉

パターン認識     【パターンニンシキ】 pattern recognition  パターンとは,点や線分などの要素が何らかの規則性をもって配置されることによって生じる形状あるいはそれらの秩序を表すことが多い。さらに,パターンといっても空間的なものに限らず,光の点滅や音の変化などの時系列など時間的なものをさす場合もある(行場次朗・市川伸一1994)。文字や顔,声の認知など,人間の精神活動はその卓越したパターン認識機能に大きく依存している。 【パターン認識の基礎過程】 認識に先立ち,個々のパターンを背景や他のパターンから分離し,大きさや傾きなどの変形を修正することが必要である(図1)。工学的にはセグメンテーションや前処理などとよばれるプロセスに相当するが,心理学では,図地分化や形の恒常性の問題として取り扱われてきた。パターンの抽出には,テクスチャー識別のようにたんなる領域の分離だけではなく,輪郭の生成や分節,背景領域の補完などのプロセスが密接に関与している。 図表 【パターンの内的表現】 人間やコンピュータがパターンを認識する過程は,脳内あるいはシステム内に構成されたパターンの内部表現と入力情報とのマッチングをとる過程として捉えることができる。一般に,パターンの内的表現形式には,以下のものが提出されている(Lindsay, P. H. & Norman, D. A.1977)。最も単純な考え方は,鋳型表現である。これは,頭のなかにパターンの原型を示す鋳型のようなものが保存されていて,パターンを認識する時に,入力情報との鋳型照合が行われるとする考え方である。しかし,認識可能なパターンの数やその変形の多種多様さを考えると,それらすべてについて鋳型を用意することはとても不可能である。かわりに,あるパターンを他から区別する特徴を準備して,その有無のチェックを行う特徴分析の方式がある。しかし特徴分析では,同じ特徴をもつが形状の異なる対象の弁別が説明できない。そこで,特徴リストだけでなく,それらの結合や関係の仕方を命題や有向グラフなどの手段を使って記述した表現が構造記述である(図2)。構造記述に基づく内的表現は,全体・部分関係も階層的に表現できるので,スキーマとよばれることがある。 図表 【パターン認識のプロセス】 パターン認識がどのような過程により進行するかについては,基本的に二通りの見方がある。一つは,ボトムアップ処理や,データ駆動型処理とよばれるプロセスであり,特徴分析を積み重ねて認識や解釈にいたるとする見方である。代表的な考え方に,パンデモニアム・モデルがある。一方それとは逆に,トップダウン処理や概念駆動型処理とよばれるプロセスでは,知識を利用して立てた仮説や予期から出発して特徴分析が行われる。スキーマ内の全体に対応する上位ユニットが活性化されると,下位ユニットも活性化され,部分の同定が促進される可能性がある(図2)。ナイサー(Neisser, U.1976)は,ボトムアップ処理とトップダウン処理は,知覚循環(perceptual cycle)とよばれる過程のなかで交互に現れるとしている。つまり,特徴分析→スキーマの喚起→予測的探索→特徴抽出→スキーマの修正→……という一連のサイクルとしてパターン認識を捉えるのである。両処理過程の交互作用は,中間結果を書き留めておくバッファー(黒板にたとえられる)を介して行われるとする考え方(ブラックボード・モデル)もある。 【ニューラル・ネットワークによる表現】 近年めざましい進展をみせたものに,並列分散処理を前提にしたニューラル・ネットワーク・モデルによる表現がある(Rumelhart, D. E. & McClelland, J. L.1986)。このモデルでは,記述に必要な特徴や構造関係をあらかじめ明示的に設定する必要はなく,入力データと出力形式,および学習法則を適切に設定すれば,学習によって必要な表現が自動的に形成されてゆく。逆に,学習がすんだ状態のネットワーク結合から,そこに暗示的に示されている表現内容を推測するやり方をとる。また,ネットワーク・ユニットの相互活性化の過程により,不完全なパターンが呈示された場合の頑健性や文脈効果も説明できることも大きな魅力である。神経生理学的研究とともに今後の進展が期待される。 →鋳型照合 →特徴分析 →トップダウン処理/ボトムアップ処理 →知覚循環モデル →ニューラル・ネットワーク →パンデモニアム →顔認識 →文字認知 →前処理 →図と地 →vid.文献 ◆行場次朗

心理学辞典 ページ 1761 でのパターンニンシキ単語。