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パーソナリティ     【パーソナリティ】🔗🔉

パーソナリティ     【パーソナリティ】 personality  人の,広い意味での行動(具体的な振る舞い,言語表出,思考活動,認知判断感情表出,嫌悪判断など)に時間的・空間的一貫性を与えているもの,と定義される。似た言葉に気質(temperament)があるが,この場合は遺伝的な影響の大きいものを想定している。性格(character)との区別は実際のところさほど明確ではないが,characterが「刻みつけられたもの」という意味の言葉から派生し,personalityが「仮面」(ペルソナ persona)という言葉を語源にもつことからわかるように,後者には,比較的変化のある外界との適応のさまを表面的に捉えたものであるという意味がある。なお日本語の「人格」には「人格者」という言葉があることからわかるように価値判断的色彩が強いので,学術的にはパーソナリティという表現が好まれる傾向にある。  上述の定義において,「時間的一貫性」とは,多少の変化や波はあっても,時間の経過によって変化することがあまりないことを意味する。また「空間的一貫性」は,多少の違いはあっても,ある場面や状況で変化することは少なくかなり共通した特徴が認められる,ということを意味する。今,目の前にいるA氏の言動にうかがえるA氏らしさは,A氏においてずっと以前から続いてきたことであり,明日以降もおそらくそのままであろうと予測することができる。同様に,ある状況におけるA氏の振る舞いの特徴は,他の状況でもほぼ同じであろうと期待できる。むしろ,昨日までのA氏とは全く別人のような振る舞いが観察されれば,周囲は大きな違和感と強い不安を覚えるであろう。あるいはまた人は,「○○さんは,どんな人ですか」と聞かれたとき,その人の外見的特徴を記述するのではなく,その人の性格,それを端的に説明するような性格特徴を述べるのが普通である。パーソナリティとは所詮一つの仮説構成体にすぎないが,以上の例からもわかるように,我々は誰もがパーソナリティを実体として,しかも人の個性の中核をなすものとして認めているのである。  古典的には,いくつかの類型にあてはめるようなパーソナリティの記述(性格類型論)が主流であり,一般にも受け入れられやすい。これを裏づける例として,血液型による性格診断が根強い人気を保っているという事実をあげることができる。血液型が性格を規定するなどありえないことは,実証されているのにもかかわらず信じる者が多いのは,血液型が四つという手軽な数であることも関連している。A型を標準としてO型,B型,AB型にそれぞれバリエーションある説明を付与することは,少数の類型にあてはめて捉えるという世俗的な性格理解とうまくマッチしているのである。実際には専門家にも類型論志向は根強い現状があり,心理療法やカウンセリングなどの応用・実践領域では,現在でも類型論的な評価方法が中心である。一方,実証科学としての心理学研究においては,個々の特性をそれぞれ誤差がなるべく最小となるように数値化し,それらを総合的に評価する方法が主流である。このような乖離も,パーソナリティは,地道な科学的な研究の積み重ねによって明らかになる研究対象として価値があると同時に,我々人間がふだんから,互いの個性を認めあい,評価しあうために手軽で便利に使える道具であるという,けっして無視できない事実を裏づけるものであろう。 →性格 →個性 →気質論 →人格心理学 →人格検査法 →心理診断 →人格目録 →性格類型論 →性格特性論 →人格障害 →モーダル・パーソナリティ ◆神村栄一

心理学辞典 ページ 1755 でのパーソナリティ単語。