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エソロジー     【エソロジー】🔗🔉

エソロジー     【エソロジー】 ethology  行動を手がかりとして,さまざまの動物や人間について比較研究する学問分野。これまで,習性学,行動生物学,動物行動学などともいわれてきた。心理学においては比較行動学といわれることが多い。エソロジーの基本的研究方法は,長い進化のなかで動物が生活してきた自然の生活場面に観察者はたとえ研究のためであってもできるだけ手を加えないで,彼らの行動を詳細に観察する(自然観察)ことである。自然観察から得られた行動をもとに,遺伝的に決められた種に固有(species-specific)の行動様式(固定的行動型 fixed action pattern)に特に注目して行動目録(エソグラム ethogram)を作成し,行動を分類・分析する。このような手続により,彼らがなぜそのような行動を行うか,その行動が個体と種の生活や適応にいかに役立っているか,その行動がどのように発達してきたか,などを調べ,またある行動を取り上げて,さまざまの動物について系統発生的に比較検討することにより行動発現の機構を明らかにしようとする。ホイットマン(Whitman, C. O.),ハインロート(Heinroth, O.),クレーグ(Craig, W.)らが一つの研究分野として基礎的研究を行ってきたエソロジーを,その後ローレンツティンベルヘンらがさらに発展させた。この新しい研究分野を一つの研究領域としてまとめあげた功績により,1973年,ローレンツ,ティンベルヘンとフリッシュの3名がノーベル生理学医学賞を受賞した。なお,前田嘉明1955は第二次大戦後にローレンツを訪問し,帰国後彼を中心とした比較行動学をわが国に紹介した。  エソロジーは,本来的には,人間を含む動物行動の研究分野であるが,特に主として人間を対象とする時には人間(比較)行動学(human ethology)といわれる。この分野の研究は,ローレンツの行った幼児図式(baby schema)の研究に始まるといわれている。彼は,幼児のもつ,一般的に丸い体型,身体に比較して大きな頭,まるまるとした手足や頬,などの形態的特徴は人間のみならず他の動物の幼体とも共通する特徴であり,この形態的特徴に加えて子どもらしい行動やにおいなどの特徴が成人・成体に「かわいらしい」とか「愛らしい」という感情や気持を起こさせることを指摘し,これが人間における生得的解発機構(IRM)の一例であると考えた。その後,ローレンツの高弟であるアイブル - アイベスフェルトは,欧米のみならずアフリカやアジアなどの多様な文化のなかに生活する人間に共通する表情を手がかりとして,人間における生得性の研究を行い,人間(比較)行動学をさらに発展させた。 →系統発生/個体発生 →行動 →本能 →霊長類研究 →動物心理学 →vid.文献 ◆南徹弘

心理学辞典 ページ 172 でのエソロジー単語。