脳波 【ノウハ】🔗⭐🔉振
脳波 【ノウハ】
electroencephalogram ; EEG
脳の電気活動を,ヒトの頭皮上においた電極から導出して,脳波計などで増幅,記録したものが脳波である。その記録は,時々刻々の電位変化であるために,波の連続的な変化となる。これが,原語の直訳である電脳図,脳電図ではなく,脳波という訳語が用いられるゆえんである。また,
大脳皮質表面でも(皮質脳波),脳深部でも記録できる(たとえば,
海馬脳波)が,たんに脳波という場合には上記の頭皮上記録をいう。
【記録法】 医学臨床で行われる脳波検査の場合には,複数の部位(最低で9チャネルくらい)から同時に記録することが原則であるが,研究目的の場合には1部位からだけの測定でも可。しかし,脳波の導出部位に関しては,国際式10-20法で定められた頭皮上部位に電極を置くのが原則であり,通常,左右の耳朶(鼻尖や頭部外平衡型電極も可)に置かれた
基準電極との間の電位が導出される(基準導出)。臨床検査の場合には,それらの頭皮上電極間での導出も行われる(双極導出)。具体的には,頭皮上のそれらの部位に皿電極を電極糊(ペースト)で貼りつけて導出される。
【形状・視察】 周波数と振幅という2種類の属性の変化となるが,具体的には,異常脳波や睡眠中にみられる単発的な一部の波形を除いて,周波数,振幅ともに類似した波がわずかずつ変化しながら数秒(場合によっては1秒未満から数十秒)間連続し,それらがまた繰り返されるのが普通である。また,脳波の形状は,部位間で,特に近くの部位ほど似ているが,脳波の最も基本となる
アルファ波は,前頭部に比べて後頭部で優位(出現頻度が高く,高振幅)である。他方,側頭部では平坦で目立った波がないのが通例である。さらに,脳波をみる時(視察)には,脳波は
筋電図,眼電図,
心電図等に比べて振幅が小さく,しばしばそれらなどが混入してくる(
アーティファクト)ので,それらを脳波と見誤らないようにいつも留意すべきである。
【脳波の分類】 脳波は,周波数を基準にして,アルファ波,
ベータ波などに分類されるが,それは以下の3種の根拠による。(1)脳波はすべて,ほぼ0.5〜35Hzの範囲内にあるが,この周波数内のある特定の周波帯の波が比較的よく出現すること。それに随伴した変化が,(2)振幅(ほぼ数μV〜数百μV。原則的には
速波ほど低振幅である),および,(3)出現状況(覚醒―睡眠,乳幼児期から成人までの成熟,など)に認められることによる。
【異常脳波】 正常脳波とは健常成人の大部分から得られるパターンであり,理論的に正しいというものではない。しかし,以下の2種類に大別できる異常脳波は,異常な脳活動によると考えることができる。突発性異常:棘波きよくは(持続時間が約80ミリ秒以内のスパイク様の単発の波形)などで,
てんかん患者の診断の場合に重要視される。非突発性異常:昏睡などの
意識障害,精神遅滞児,
精神分裂病患者,などにみられる
徐波である。たとえば,精神遅滞児では,健常児では2〜3歳で出現する高振幅徐波(
シータ波)が,14歳頃まで出現する者があり,それは脳成熟の遅滞を反映するものと考えられる。
【分析法】 脳波が周波数を基準に分類されることからわかるように,その周波数の分析がおもな分析法である。そのなかで,最もよく用いられるのは高速
フーリエ変換(FFT)によるパワースペクトルの算出であり,それによって,ある脳波成分の出現率(たとえば,全脳波に対するアルファ波出現率など)や,その成分自身の周波数変動(たとえば,音楽を聞いている時のアルファ波の周波数の低下など)が求められる。その他,部位間の関連性に興味がある場合にコーヒレンス(coherence)を求めたり,同様な目的で相関分析法が用いられることがある。
→アルファ波 →ベータ波 →シータ波 →速波 →徐波 →デルタ波 →脱同期化 →アーティファクト →基準電極 →睡眠 →REM睡眠 →賦活
◆投石保広
















心理学辞典 ページ 1729 での【脳波 】単語。