脳損傷 【ノウソンショウ】🔗⭐🔉振
脳損傷 【ノウソンショウ】
cerebral lesions
神経系は,
脳と
脊髄からなる
中枢神経系と,そこから全身に行きわたる
末梢神経系とで成立している。しかしこの2系統は損傷に対する反応が全く異なり,後者は比較的損傷に強くて部分的に破壊されても
再生力があるのに対して,前者は損傷にきわめて敏感であり,修復がほとんど困難である。特に脳は精神活動をつかさどっているため,損傷によって身体面だけでなく,さまざまな
神経心理学的症状が出現する。
脳の物理的損傷には外的,内的要因がある。外的要因としては頭部への衝撃がある。脳は頭蓋に守られてはいるが,衝撃により脳振盪,脳挫傷,脳圧迫が起きる。脳振盪は一時的な記憶喪失で,一過性の場合が多く,原則として回復可能である。脳挫傷は頭蓋の骨折を伴うことが多く,脳実質が損傷を受けた状態で,出血や組織の壊死えし,断裂がある。内的要因として,一般に脳卒中といわれてきた
脳血管障害があり,これは,(1)脳梗塞,(2)頭蓋内出血,(3)一過性脳虚血発作,に分類される。(1)には動脈硬化性病変が狭窄をきたしてできた血栓により閉塞する脳血栓,心臓内血栓などが剥離して脳動脈閉塞に至る脳塞栓があり,(2)は大部分の原因が高血圧性出血による脳出血と,やはり主原因が脳動脈瘤破裂であるクモ膜下出血に分けられる。
こうした損傷の部位と程度は,神経心理学的症状とかなり明確な対応関係にある。脳はしばしばコンピュータにたとえられるが,コンピュータと違ってハードウェアと機能が厳密な一対一対応ではなく,ある部位が損傷しても補完機能が働くことがある。また
失語といっても言語機能すべてが失われるわけではないように,必ずしもある機能が完全に欠落するというのではない。この意味で脳(機能)をウェットウェアあるいはウェットマインドとよぶこともある。
→中枢神経系 →微細脳損傷 →脳血管障害 →脳性マヒ →再生(神経の)
◆増井透









心理学辞典 ページ 1727 での【脳損傷 】単語。