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認知心理学     【ニンチシンリガク】🔗🔉

認知心理学     【ニンチシンリガク】 cognitive psychology  広義には,知的機能の解明に関わる心理学を全般的にさすが,狭義には,1950年代後半以降に情報科学の影響を受け,人間を一種の高次情報処理システムと見なす人間観に基づき,相互に関連する情報処理系を仮定し,そこにおいて実現される情報処理過程の解明によって,心的活動を理解しようとする心理学の一分野をさす。現在の認知心理学は,情報科学や言語科学と密接な関係を有する認知科学や,科学との連携のもとに発展しつつある。初期の認知心理学においては,特定情報が比較的安定した構造をもつ貯蔵庫を通じて逐次的に処理され,その過程における処理容量への制限が,特定時間内での心的活動に影響を及ぼすと見なしていた。現在では,特定処理が完了した後に,系列的に情報が処理されるとする観点をとることは少なく,むしろ多くの場合,相互に影響を及ぼしあう並列処理的な観点を採用する者が多い(Lachman, R. et al.1979)。認知心理学では,心的活動が汎用的目的をもつ記号処理システムであると見なし,知的行為に含まれる処理システムの理解と,システムの運用を可能とする表象の解明を目標としているが,最近では処理の並列性に加えて処理の分散性を考慮し,神経結合を模して,より微視的なレベルからモデルを構築しようとする非記号論的なアプローチも認められる。  広義の認知心理学の発展は,その誕生以前に心理学で主流を占めていた行動主義との対比によって特徴づけられる。ワトソンらに代表される行動主義は,科学における観察可能性と論理実証性とを重視し,観察可能な刺激反応の関係性の記述によってのみ,行動を記述する研究姿勢を推奨していた。その結果,行動主義は,多くの現象を刺激と刺激,あるいは刺激と反応間の連合によって説明することに成功を収めたが,20世紀の後半を迎えるにつれ,言語の産出と理解や,思考における創造性や,一般的な問題解決能力などの,より高次な心的活動の説明に限界を示し始めた。こうした研究動向を背景として,直接的には観察不可能な心的活動,特に積極的に情報を取捨選択し,意思決定を行っていく過程を主として研究する認知心理学の萌芽が形成された。ただし,1950年代以前に行われていた,ジェームズ(James, W.1890)の唱えた一次記憶と二次記憶の区別や,バートレット(Bartlett, F. C.1932)が唱えたスキーマ(体制化された知識)による記憶への影響などの研究が,後の認知心理学の発展に影響を与えたことは特筆に値する。 →認知科学 →認知神経科学 →記憶 →言語 →思考 →表象 →行動主義 →問題解決 →スキーマ →vid.文献 ◆齋藤洋典

心理学辞典 ページ 1702 での認知心理学     単語。