内観 【ナイカン】🔗⭐🔉振
内観 【ナイカン】
introspection[E]; Selbstbeobachtung[G]
自分自身の
意識経験の過程を
心理学の直接のデータと見なし,それを観察すること。内省ともいう。
ヴントの時代には,心理学を哲学的思弁と袂を分かつ唯一の科学的方法だと考えられていた。また,心理学と他の自然科学とは,前者がある対象に面した時の人間の意識経験を直接取り扱うのに対して,後者は,その結果としての,対象の側のもつある特定の構造や法則の発見に努めるという点で決定的に異なる,とされた。後者は間接経験とよばれ,当初は心理学の対象とはされなかった。
直接経験は,
意識の流れをつかさどっているものであり,その観察のためには,意識の流れに沿って内観データをとる必要がある。これが内部知覚や
純粋感覚,
簡単感情の報告である。しかし多くの場合,一定の課題を遂行した後でのそれまでの経験の意識の報告となり,想起に基づく追観(retrospection)となってしまう。
ティチェナーは,ヴントの取り下げた内観の方法を,思考過程の分析のような高次の精神活動にも使えるよう精緻化し,内観によって得られた感覚要素を列挙し目録を作り,そこから元の意識を構成していくという
構成主義心理学を唱えた。構成主義心理学の基本的な方法論が内観である。
ワトソンの
行動主義において内観という方法は徹底して非難されたが,1950年代なかば以降の
認知心理学の隆盛のなかで,改めて内観報告の有用性が見直され,内観
プロトコル分析という形で復帰している。これは統制された実験室場面を離れた,ある特定の状況下における認知主体の思考過程の分析に有効であり,発達・臨床心理学等では
情報処理アプローチの文脈のなかで重要な位置づけがなされている。
→純粋感覚 →簡単感情 →構成的心理学 →プロトコル分析 →行動主義 →情報処理アプローチ
◆田中俊也













心理学辞典 ページ 1651 での【内観 】単語。